『世界クジラ戦争』を書いた小松正之氏(政策研究大学院大学教授)に聞く--食を地球的な課題と多様性を持って考えよ
13年にわたって日本の「捕鯨外交」を担った著者は、南氷洋と北西太平洋での調査捕鯨の「生みの親」でもある。6月のIWC(国際捕鯨委員会)開催を控え、シー・シェパード騒動にも注目が集まる。
--クジラでも「弱腰外交」が言われます。
言うべきことはきちんと言ったほうがいいと思う。言いたいことを明確にするほうがかえって、両国間の理解が深まるし、余計なことに飛び火しない可能性が高くなる。
アバウトに言っていると誤解を生む。情報がないと勝手に理解するからだ。日豪会談でもフランクに、「ああいう妨害活動は、寄航を拒否するとか補給を拒否するとか、明確にやってください」と話すべきだ。
--オーストラリアは反捕鯨国であり、訴訟に訴えるという話もあります。
私が当事者だったら喜んで受けて立つ。90%以上の確率で日本が勝つか負けない。オーストラリアが勝つ可能性はほとんどないに等しい。
というのは、オーストラリアの根拠は、日本が調査捕鯨している海域は自国の200カイリ内という主張だからだ。
南極大陸の領有権を主張している国をクレーマントという。日本をはじめ国際社会のほとんどの国はノンクレーマントで、領有権を主張しないし、同時にいかなる国の領有権も認めない立場にある。クレーマントの前提は受け入れられないだろう。
ただし、裁判に持ち込まれるほうがいいのかもしれない。商業捕鯨の一時禁止(モラトリアム)が1982年に決まって、もう30年も一時禁止のまま。本質の部分を争える。