『世界クジラ戦争』を書いた小松正之氏(政策研究大学院大学教授)に聞く--食を地球的な課題と多様性を持って考えよ


 ただ、これは船を出して数えられる海域だけで、最近の温暖化で南極大陸の内側に湖のようなものができ、そこのクジラがカウント外ともいわれる。もともと46万頭でもたっぷりいると思うが。

ほかにもザトウクジラは、オーストラリアの南の海域で年率14%ずつ増えているようだ。身体はミンクの8倍くらいある。比較すると、ザトウの頭数は少ないが、1頭当たりの体重が重いから、全体の頭数と1頭当たりの重さを掛けて足し上げると、これをバイオマス(生物資源量)というが、これはザトウのほうがミンクの3倍あるといわれている。

--クジラの食としての地位は日本でも低いですね。

鯨肉は6000トン程度の流通。ピークに25万トンを数えた時もあった。現在は畜肉500万トンのうちほぼ3分の1ずつ鶏、牛、豚が占めている。

確かに微々たる量だが、多様性を持って食を考えていく必要がある。鯨食の食文化は数百年にわたって江戸時代から続く。日本人がクジラを食べればその分、鶏、牛、豚の需要が減り、それらの人工的な生産による地下水や化学肥料、土壌劣化などへの影響も薄めることができる。ますます天然資源の循環で完結すべき時代にもなっている。

むしろ日本がやるべきことは、南氷洋調査も地球温暖化や海洋酸性化、食料問題に対応して、目的を世界人類に貢献するような調査に組み替え、充実させていくことではないか。それが世界に通用する考え方だと思う。

(聞き手:塚田紀史 =週刊東洋経済)

こまつ・まさゆき
1953年生まれ。東北大学卒業後、農林水産省入省。米エール大学経営学修士号、東京大学農学博士号取得。水産庁において日米漁業交渉、FAO(国連食糧農業機関)、IWC(国際捕鯨委員会)、CITES(ワシントン条約締約国会議)、ミナミマグロ保存条約などを担当。2008年より現職。

『世界クジラ戦争』 PHP研究所 1785円

  

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