『世界クジラ戦争』を書いた小松正之氏(政策研究大学院大学教授)に聞く--食を地球的な課題と多様性を持って考えよ
最初は90年まで5年間の暫定的な禁猟期間を経て再開ということだったが、90年から今ちょうど20年経ってもそのまま。その間、日本は87年から商業捕鯨に必要なデータを科学調査する、つまり調査捕鯨で南氷洋に出て、94年に北西太平洋でも調査船団を出し、それぞれ拡充して現在に至っている。
調査捕鯨は条約の8条に基づいている。その副産物の「上がり」でまた翌年以降の調査を続ける形が公認されている。ただ、最近の捕獲頭数は割り当て頭数を下回る。実際、この3年、07年に505頭、08年551頭、09年679頭にとどまる。割り当て枠は851頭に設定されている。こういうことが続くと、経費が確保できず、持続が難しくなることもありうる。
--世界的には反捕鯨国が優勢なわけです。
現在、IWCの大勢は、加盟88カ国のうち、反捕鯨国が49カ国、捕鯨支持国が35カ国見当。捕鯨支持国は条約にうたうように、クジラを科学的根拠に基づいて持続的に利用し、関連産業の健全な発展を目指すという考え方だ。
一方で、反捕鯨国は、確かに国際捕鯨取締条約はあるが、条約は時代とともに変遷する、条約自身を変えなくてもその解釈が変わっていくべきというもの。科学的根拠に対しても、もともと科学は往々にして間違う。したがって予防的措置として獲らないことも重要という立場だ。
--クジラの頭数自体は。
たとえば南氷洋で想定ラインを引き、囲いを作った形にし、船を出して目視調査をして頭数を数え、それを全体に引き伸ばして計算する。ミンククジラは最近時の合意は76万頭だが、46万頭に修正すべきという見方もある。