確かにバイデン氏は、大企業を中心とした企業と富裕層に対する増税案を政策として掲げている。
法人税制ではまず、連邦法人税率を現行の21%から28%へ引き上げる。トランプ減税で35%から21%へ引き下げられたものを半分巻き戻す形だ。また、会計上の純利益が1億ドル(約105億円、以下、1ドル=105円換算)以上の企業に15%のミニマム税を導入するほか、国内生産への回帰を促すためアメリカ企業の海外利益に科すミニマム税を21%へ倍増する。バイデン氏は、アマゾンなど「大企業の税逃れを終わらせる」と主張している。
さらに、海外生産品の販売によりアメリカ国内で稼いだ利益に対しては、法人税率28%の1割にあたる2.8%を追加課税する。海外生産に対する「懲罰税」とも言われるものだ。
年収40万ドル以下の個人には増税せず
個人税制ではまず、所得税の最高税率を37%から39.6%へ引き上げる。また、年収100万ドル(約1億0500万円)超の富裕層の投資収益(キャピタルゲインと配当収入)に対する税率を、現行の20%から39.6%へ上げる。富裕層ほど全収入に占める投資収益の比率が高く、税負担率が相対的に低いためだ。
加えて、社会保障財源として年間13.77万ドル(約1445万円)までの所得に12.4%(雇用主と6.2%ずつ折半)の税率が課せられている給与税について、年間40万ドル(約4200万円)超の所得に対しても追加で12.4%を課税する。さらに、年収40万ドルを超す富裕層の所得控除を所得全体の28%までに制限するほか、相続時の財産取得価格を時価に引き直す「ステップアップ制度」を廃止する。同制度により不動産など相続資産を売却するときに譲渡益課税額が少なくなることを問題視したものだ。
全体的に富裕層を狙い撃ちした増税であり、バイデン陣営では年収40万ドル以下の個人には増税しないと説明している。中・低所得層には育児や介護、住宅取得に対する税額控除を拡充する意向で、拡大傾向が続く所得格差の是正を目指している。
こうした増税案は今後10年間で総額4兆ドル(約420兆円)規模に上ると言われ、これだけなら景気には当然、大きなダメージとなる。
しかし、バイデン氏はそれを上回るほどの財政支出も同時に提案している。最も大規模なプランが、2050年までの温暖化ガス排出量実質ゼロ達成と経済再生の両立を図るための4年間で2兆ドル(約210兆円)という巨額投資だ。いわば米国版の「グリーンリカバリー」である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら