「トランプ感染」でアメリカ大統領選はどうなる 死亡など万一の場合は前例なき大混乱に

拡大
縮小
軍の医療施設から国民に向けて動画メッセージを送るトランプ大統領(写真:The White House/Handout via REUTERS)

最初の「オクトーバー・サプライズ」は大統領自身の感染だった。

アメリカのトランプ大統領は現地時間の10月2日早朝、自らとメラニア夫人の新型コロナウイルス陽性をツイッターで公表した。そして同日夕に首都ワシントン郊外のアメリカ軍医療施設に入院した。今のところ軽症のようだが、しばらくの間は「隔離」を強いられるだけに、11月3日の投票日に向け終盤戦へ突入しているアメリカ大統領選挙に多大な影響が生じるのは必至だ。

今後数日の症状が試練

トランプ氏は入院後の3日夜にツイッターでビデオ動画メッセージを投稿。医療関係者への感謝の弁の後、「私はあまり気分がよくなかったためここへ来たが、今ははるかにいい」と述べ、「アメリカを再び偉大な国にするために、できるだけ早く仕事へ戻らなければならない」と早期の通常執務復帰へ意欲を見せた。

ただ、「気分はよくなり始めてはいるが、今後数日のことはわからず、本当の試練になるだろう」とも語り、今後数日の症状の推移が重要との考えを示した。国旗をバックに、ノーネクタイのジャケット姿で座って国民に語りかけた大統領は、やや疲れた表情には見えたが、カメラをしっかり見据え、約4分間のスピーチにほとんどよどみはなかった。

4日には一時、入院先の医療施設から車で外出し、窓越しに支持者らに手を振って健在ぶりをアピール。同日夕には再び動画メッセージで、今度は立ったまま前日より力強い声で医療関係者や支持者に感謝の意を示すとともに、「(入院によって)コロナについて多くのことを学んだ」と語った。

ホワイトハウスは当初「軽症」と説明していただけに突然の入院には衝撃が走った。詳しい病状や感染経路は不明だが、主治医らによると、トランプ氏は入院前の時点で臨床試験中の抗体治療薬を投与され、入院後に抗ウイルス薬「レムデシビル」の投与が開始された。テレビインタビューに応じたメドウズ大統領首席補佐官によれば、血液中の酸素濃度が一時的に急低下していたといい、事態は楽観できない。今後少なくとも数日は入院が続き、その間は医療施設内で大統領としての執務を続ける見通しだ。

トランプ氏の感染について民主党大統領候補のバイデン前副大統領は、まず2日のツイートでトランプ夫妻の早期回復を祈ると投稿。同日中に自身とジル夫人のコロナ陰性の検査結果も公表した。そして、コロナ禍の甚大な脅威を克服するため、今こそ全米の団結が必要と訴えた。

大統領感染の報に週末2日のウォール街も動揺した。特にもともと高値警戒感の強かったナスダック総合指数は、前日比2.22%安と大きく下落。一方、S&P500指数は0.96%安、NYダウ工業株30種平均は午後反発で0.48%安にとどまった。議会で交渉が続く追加経済対策の合意期待が相場を下支えした。一方、NY外国為替市場は20銭円高・ドル安の1ドル=105円30~40銭で取引を終えた。

次ページトランプ氏の選挙戦術上、痛手に
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT