トランプ氏が主張する「バイデン不況」は本当か 富裕層増税の反面、財政支出拡大が景気を刺激

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バイデン氏は増税を原資にインフラ投資など大規模な財政支出を提案している(写真:Morry Gash/Pool via REUTERS)

その中には気候変動リスクへの耐久性を高めるためのインフラの再建や、電気自動車(EV)普及のための50万カ所に上る充電ステーションの建設、温暖化ガスを排出しない公共交通機関の整備、2035年までに電力部門の温暖化ガス排出ゼロを実現するための税制措置などを含む。

また、「バイ・アメリカン」戦略と称して、4年間にアメリカ製品の政府調達に4000億ドル(約42兆円)、EVや5G通信網、バイオなど先端技術の研究開発支援に3000億ドル(約31.5兆円)の財政資金を投じる方針だ。これにより製造業で500万人の新規雇用を創出すると主張している。

さらに育児・介護への7750億ドル(約81.3兆円)を支出することにより10年間で保育士・介護士など300万人の新規雇用を目指すほか、マイノリティが経営する零細企業に1500億ドル(約15.7兆円)を支援するなど人種的正義(レイシャル・ジャスティス)を実現するといったプランである。

これらの増税や財政支出はあくまで選挙公約であり、当選した場合の実現が保証されたものではない。実現には連邦議会の承認が必要となり、大きな不確実性が伴う。

ウォール街は民主党圧勝なら景気拡大を予想

とはいえ、現状の世論調査ではバイデン氏の優勢が続いており、連邦議会選でも下院(全435議席改選)は民主党が現有議席と同様に優位に立つ。そして上院(全100議席の約3分の1改選)においては、民主党は現有47議席に対して51議席まで伸ばす可能性が高まっており、わずかながら過半数を奪回する勢いにある(リアル・クリア・ポリティクス集計)。

つまり、民主党が大統領と上下両院の3つで勝利し、「ワシントン支配」を強める可能性が高まっている。アメリカでは民主党のイメージカラーにちなんで、これを「ブルーウェーブ(青い波)」などと呼んでいる(日本ではトリプルブルーとも)。

ブルーウェーブの可能性が増す中、ウォール街ではアメリカ経済への影響について、ポジティブな解釈が目立ってきている。

ゴールドマン・サックスのエコノミストは今月のレポートで、「ブルーウェーブが実現した場合、経済見通しを上方修正する可能性が高い」との見解を示した。現在、アメリカの実質GDP(国内総生産)成長率予想について2020年がマイナス3.5%(市場予想の平均はマイナス4.4%)、2021年が5.8%(同3.7%)とかなり強気だが、これをさらに上方修正するというのだ。

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