子連れキャンプの危うい一瞬、暗闇捜索の悪夢 山岳救助のプロが解説する山の意外な落とし穴

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姿が見えなくなった約1時間、男児は何をしていたのか。女性が長男から聞き取ったところ、長男はトイレに行って、テントに戻る途中に水たまりで遊んでいるうちに再びトイレに行きたくなり、離れた別のトイレで用を足した。暗くなってしまい自分のテントがわからなくなって歩いていたところを、他のキャンパーが気付き付き添ってくれたという。

「探している間は林でケガをして動けなくなっているのではないか、連れ去られたのではないかなど最悪のケースばかりを考え、生きた心地がしなかった。今は設営にどんなに時間がかかっても、キャンプ場では目を離さないようにしている」と女性は話す。

キャンプ場に着いたら設営の前にまず「探検」

野外のキャンプやイベントを主宰するNPO法人千葉自然学校の小松敬事務局長は、「キャンプ場に着いたら『さあ、テントを張ろう』とすぐに設営を始める人が多いが、まずは家族でキャンプ場を歩いて探検してほしい」と呼び掛ける。

キャンプ場の範囲はどこまでか、迷い込みそうな林やスズメバチの巣はないかなど危険なものを確認し、「なぜ危ないか」という理由も子どもに伝える。「好奇心旺盛な子どもは、想像もしない行動をとる。でも危険な理由を理解すれば、無茶はしない」(小松事務局長)。

当然ながら子どもは面倒くさいことは嫌がるので、テント設営の時は指示をするだけではなく、完成イメージを伝え、今どの部分を組み立ているか興味を持たせながら作業するとよいという。

キャンプは親が作業に夢中になり、子どもから目を離してしまう場面が少なくない。筆者にも経験があるがグループキャンプでは、子どもたちだけで遊びに行ってしまうこともある。昨年9月には山梨県道志村のキャンプ場で当時小学1年生の女児が行方不明になった。報道によると、女児は先に遊びに出かけた友人たちの後を追って行方がわからなくなった。

Bluetooth発信機「ライフビーコン」(写真:筆者提供)

野外に限らず子どもから目を離さないことが最も重要だが、最近は子どもの位置情報を知らせる製品開発も進む。キャンプ用品メーカーのスノーピークは9月から、Bluetooth発信機「ライフビーコン」のレンタルを始めた。

幼児の手の平に載る大きさで、子どもに発信機を持たせておくとスマートフォンでは最大200m、専用受信機では同1.4kmの電波が受信可能で、子どもが離れた時にアラートが出る仕組みだ。

協業したオーセンティックジャパン(福岡市)は、登山者を想定した会員制のヘリ捜索サービスを手掛ける。会員証代わりの小型発信機を持った人が登山中に遭難すると、捜索ヘリで発信機からの電波をたどり居場所を特定する。

半径16kmをカバーし、34都道府県の警察や消防が電波をキャッチする専用の受信機を導入。ライフビーコンは日常使いを想定した製品で、久我一総代表は「携帯する習慣をつけることで、災害などで役立ててほしい」と語る。

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