子連れキャンプの危うい一瞬、暗闇捜索の悪夢 山岳救助のプロが解説する山の意外な落とし穴

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櫛引隊長は「登山の準備段階で想定されるトラブルへの対処法も考えてほしい」と言う。トイレ場所の確認、ハチやうるし、野生生物にどう対処するか、悪天候や下山が遅れて夜間になった場合を想定して、ヘッドライトなど装備も万全にしたい。

危険なのがスマートフォンのGPS機能への過信だ。「街の中と違い、山にはほぼ目印がない。GPSで自分の位置がわかってもポイントになる地名や地形がわからなければ、救助要請するときに自分がいる場所の説明ができなくなる」(櫛引隊長)。

紙の地図は故障や電池切れの心配がない。計画段階で子どもを含め、全員が紙の地図を見てコースタイムや危険な場所、迷いやすい場所を確認する。山の中は一本道の場所だけではなく、獣道があり登山道と間違うこともある。登山中もこまめに紙の地図を確認する習慣をつけることが大切だ。

SNS上の成功体験、鵜呑みは危険

グラフは過去10年、長野県で発生した山岳遭難者数の推移だ。
(外部配信先では図表やグラフを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

子どもの遭難は毎年1、2件で推移しているが、遭難者全体ではある変化がみられるという。死者・行方不明者は減少傾向、負傷者はほぼ横ばいの一方、けががなく無事救出された人の数だけが増加傾向だ。

そして無事救出された人の多くは、疲労や道に迷って遭難しているという。櫛引隊長は「遭難者から話を聞くと『こんなに厳しいと思わなかった』などと、実力以上の山を選んでしまったケースが多い。

疲労や道に迷う人が増えているのは、インターネットやSNSの影響ではないか」とみる。他の登山者の成功談を鵜呑みにして軽い気持ちで登山し、遭難するケースが増えていると考えられるという。

インターネット上で見る登山の体験談は景色が良かった、意外と簡単だった、コースタイムより早かったなどと成功談が多い。体験談を書いている人の体力や知識、経験値もわからないまま、「自分も登れる」と錯覚することは非常に危険だ。

秋の山は日を追うごとに日没時間が早くなる。日中は暖かくても朝晩は氷点下まで冷え込むことも。北アルプスなど標高の高い山では氷が張ったり、雨が雪に変わったりすることも珍しくない。

「子どもを自然に触れさせたいという気持ちは、私も一人の父親として理解できる。ただ、自然のリスクも考えずに無理な行動をすることは親のエゴで正しい情操教育ではない。自然に潜む危険もしっかりと教育することが大事だと思う」(櫛引隊長)。SNSの華やかな体験に惑わされず、子どもの年齢や体力、体調を考えたうえでアウトドアを楽しみたい。

国分 瑠衣子 ライター

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こくぶん るいこ / Ruiko Kokubun

北海道新聞社、繊維専門紙の記者を経て2019年に独立。社会部、業界紙の経験から経済・法律系メディアで取材、執筆。趣味はおいしい日本酒を探すこと。Twitter:@8kokubun

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