「今日は、彼女と指輪を買いに行きました」
富生(仮名、37歳)から、ニコニコスタンプつきのLINEが送られてきた。今月の初めに、真由美(仮名、33歳)にプロポーズして受けてもらい、月末には成婚退会も決まっていた。
私からお祝いが言いたくて、その夜、富生に電話をした。
「どこで指輪を買ったの?」
富生は、有名ブランドの名前を口にして、続けた。
「あんな高級ブランド店、これまで足を踏み入れたこともなかったのですが、どれも高いのでびっくりしましたよ」
「ずいぶんと奮発したのね」
「彼女がそこのブランドで指輪を買うのが、夢だったそうなんです。だったらかなえてあげたかったし」
富生の声は終始弾んでいた。うれしそうな声を聞いて、私も幸せな気持ちになった。
1カ月も経たないうちに、雲行きが怪しくなった
ところが、そこから1カ月も経たないうちに、この結婚話が怪しい雲行きになり、「相談したいことがあるんですが」と、富生から連絡が入った。
「先週、彼女のご両親に挨拶に行ったら、すごく歓迎をしてくださったので、ホッとしたんですが、ここ3日間くらい彼女の様子がおかしいんです。LINEのレスもないし、嫌な予感がします」
困惑しているようだったので、「彼女の変化に心当たりはないか」を聞いた。
「実は、住む場所のことでもめたんですよ。彼女は都内でも都心部に近いところに住みたいようでした。でも、長い目で見たら、賃貸よりも買ってしまったほうがいい。僕の実家の近くなら、一戸建てを買うにしても、手が届かない値段ではない。電車に40分乗れば、新宿に行ける。その話をしたら、『私は生まれも育ちも東京なんだから、住むのは都内限定』と言われたんです。もちろん、それなら都内で検討してもよかったんですが、彼女の言い方がすごく高飛車だったので、こっちもカチンときてけんかになったんです」
富生と私がこの話をした3日後に、真由美の相談室から連絡がきた。
「かなり悩んだようなんですが、今回の婚約は解消したいそうです。指輪をお返ししたいと言っています。いったんウチの相談室に送ってもらうので、その後どうしたらいいか、ご教示ください」
結婚相談所での交際は、確かに仲人間で交際終了を告げ合うのが規定になっている。しかし、それはプロポーズを受けるまでの話だ。
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