とはいえ、交際終了ときっちり線を引くのもどうだろうと迷っていた。そんなときに、4回目の誘いのLINEが来たので、洋子は、こう返信した。
「私の気持ちが落ち着いてしまったので、少し時間をおいて考えてもいいですか?」
すると即座に、返信がきた。
「僕はあてのない返事を待つほど暇ではありません。残念ですが、もう連絡を取り合うのはやめましょう。これまでのデート代を精算したいので、下記の口座に1万5000円を振り込んでください」
そこには、デートで訪れた店のレシートの写メも添付されていた。合計が3万2420円で、それを2で割れば、1万6210円。1万5000円の請求なので、わずかに女子割となっていた。
「ただ3回のデートのうち、私が一度1000円のコーヒーをごちそうしているので、210円だけ彼が多く支払った計算になります(苦笑)」
高収入でハイスペックの自分が、まさか歳の近い年収が自分の4分の1以下の女性に振られるとは思っていなかったのか。プライドが許さなかったのか。しかしながら、デートで使ったお金の半額を、関係が終わると即座に領収書とともに半額請求してくるのは、あまりにも了見が狭くないだろうか。
洋子は間髪入れずに1万5000円をネットバンキングから、彼の口座に振り込んだそうだ。
緊急事態宣言中、デートの誘いを断られ…
義雄(仮名、45歳)は、2月に由紀子(仮名、35歳)と見合いをした。見合いのときから2人は意気投合。その後は真剣交際に入り、コロナ感染者が増えていくニュースが広がっていく中でも、義雄がレンタカーを借りて3密を避けるデートを繰り返していた。
ところが、緊急事態宣言が出されると、由紀子がデートの誘いを断るようになった。
「会社から、不要不急の外出は避けるように言われているの。私が外出して感染したら、会社に迷惑がかかるから、しばらく会えません」
状況が状況なので仕方がないとわかっていたが、会えない日々が続き、彼女の気持ちが冷めてしまうのではないかと、義雄は危惧した。そこで、連絡だけは絶やさないようにした。
毎日のLINEは、欠かさなかった。マスクや消毒液が店頭から消えて買えなかった時期には、知り合いのツテで買ったそれらを由紀子に送った。
離れていてもできることをして、彼女の気持ちを引きとめておきたかった。
5月に入り緊急事態宣言が明け、生活が徐々に元に戻りつつあった頃に、義雄から、「相談したいことがあります」と、私に連絡が入った。
事務所にやってきた彼が言った。
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