大阪信金流「産学連携」術、社員を大学に常駐させ“扇の要”に

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ここで威力を発揮するのが、何のことはない、産学連携を呼びかけるたった1枚のチラシ(下写真)だ。飛び込み先でも「産学連携もやってます」とチラシを見せると、すぐに社長が出てくることも多いという。社長から「次回、大信さんが来たら引き留めておいて、と言われた」と社員が応対することもしばしば。中小企業が抱える潜在的ニーズの深さと切迫度の裏返しだろう。

いったんプロジェクトが動き出し、資金ニーズが発生した場合も、動きは速い。コーディネーターは開発段階の状況を企業・大学双方に接して熟知しているため、融資のタイミングや条件、公的支援の申請も的確に行えるメリットがあるからだ。

前出の鉢嶺研究員も「産学連携は、企業のニーズを大学がサポートするのが現実的で成功例も多い」と指摘する。とはいえ、両者の思考形式やスピードは食い違うこともしばしば。だからこそ「金融機関など調整役の存在が大事」(鉢嶺氏)になる。

目詰まりを起こしている「産学連携」というパイプに、勢いよく水を通すことで、不況にあえぐ中小企業に再生のチャンスが生まれる。中小企業の一大集積地である大阪で、地元信金を扇の要に進める産学連携には、そのヒントが詰まっている。 


(週刊東洋経済2010年3月6日号) 

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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