大阪信金流「産学連携」術、社員を大学に常駐させ“扇の要”に
「大信が産学連携をやると聞いたので好機だと思った」。歯科医療機器メーカー、シケン(大阪市天王寺区)の半導体イオン歯ブラシ「ソラデー3」は現在3代目。大阪信用金庫(大信)、大阪府立大学(大阪府大)との産学連携によって実を結んだ画期的な製品だ。
一般的な歯ブラシは1本100~200円だが、半導体イオン歯ブラシは何と1900円。従業員10人のシケンは、この歯ブラシだけで年間300万本以上、4億円を売り上げる。その特長は、同社の中川善典会長が開発した「光触媒反応」だ。
ブラシ近くの根本部分に埋め込まれている酸化チタンが濡れると、歯ブラシの手元にある太陽電池が生み出すエネルギーから電子が発生する。この電子が歯垢の中で細菌が作り出す酸と反応し、軽くブラッシングするだけで歯垢が簡単に落とせるというものだ。
中小企業が欲しいのは科学的な裏付けと自信
この歯ブラシの長所は、ブラシの部分を取り換えるだけで、半永久的に使える点。一度使った消費者から根強い支持を受け、生協や通販を中心に売れ行きを伸ばしている。
開発過程で中川会長が最も頭を悩ませたのは、光触媒でうまく殺菌できるかどうか、また、どうすれば故障しないものになるか、だった。すでに出回っている他社品は故障しやすく、効果も薄かったためだ。
この課題に四苦八苦していたころ、長年取引のある大信から大阪府大を紹介された。大阪府大は理工系の厚い大学。当時、中川会長は「歯ブラシの臨床試験などで歯学部とのパイプはあったが、製品の基礎科学的な部分になると、まったく取っかかりがなかった」と振り返る。
その後、大信が積極的に間に立ちながら大阪府大での研究活動がうまく進み、光触媒による殺菌作用が証明された。この研究から数多くの特許も生まれた。「大阪府大のお墨付きで顧客には効果と安全性を堂々と説明でき、営業も自信を持って売り込める」と、中川会長は満面の笑みを浮かべる。
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