下北沢で始動「日本版ハーバード」の凄い学び方 居住型キャンパスを立ち上げる29歳の挑戦

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ハーバード大学で学んだ小林亮介氏(前列真ん中の黒いカーディガンの男性)が日本に再現しようとする「予期せぬ対話と体験が生まれる場」とは?(写真:小林亮介氏提供)
都内で若者に人気の街、東京・下北沢に今年12月、新たなキャンパスが生まれようとしている。といっても大学が創設されるのではない。これまで日本には無かった学びの場、「レジデンシャル・カレッジ」を中心とした居住型のキャンパスができるのだ。ハーバード大学留学時にアイデアを得たという、若き起業家が語る「レジデンシャル・カレッジ」の姿とは?

予期せぬ対話と体験が生まれる

「自然と学生が集まり、予期せぬ対話と体験が生まれる場がレジデンシャル・カレッジなんです」

下北沢の駅から歩いて3分。着工中の5階建ての建物を見ながらこう語るのは29歳の教育起業家、小林亮介氏だ。小林氏は11年前、留学したハーバード大学で衝撃的な体験をした。

「ハーバード大学ではほとんどの学生が寮に入りますが、自分が学んだ寮は入口から地下の食堂を通らないと自分の部屋までたどり着けません。食堂には24時間コーヒーがおかれていて、深夜になると皆が自然と集まり思い思いに語り始め、やがて議論に発展する。たとえ会話の内容は忘れてもそこで培われた信頼関係は財産となり、一生お互いから学び続けることができるのです」

建設中のレジデンシャル・カレッジ(筆者撮影)

多様な文化、興味や関心をもつ人々が集まることで、予測不可能な議論の流れが生まれ誰も考えたことのないアイデアに到達する。これからの人生を変え、将来を決定づけるような出会いも生まれるかもしれない。予想しなかった学びや成長の機会を生み出す出会いの場こそがレジデンシャル・カレッジなのだ。

いまや世界で25億人が利用するフェイスブックは、ハーバード大学の同じ寮に住む学生たちが作り上げたサービスだ。映画『ソーシャル・ネットワーク』で描かれたようにプログラミングをする学生が寮生活で仲良くなり学生用のSNSをつくり始める。そのアイデアに共感した同じ寮の経済学部の学生が初期費用を工面し、こうして生まれたプロトタイプはやがて世界的なビジネスへと成長する。

映画『ラ・ラ・ランド』の監督デミアン・チャゼルと作曲担当ジャスティン・ハーウィッツもハーバード大学の寮のルームメイトであった。「音楽」と「映像」という異なる才能を持った2人が出会い、1つの作品に取り組むきっかけとなったのが寮で過ごした時間だったのだ。アカデミー賞受賞作が生まれた背景には、分野の壁を越えて予期せぬ出会いと交流を生み出すレジデンシャル・カレッジの存在があったといえる。

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