下北沢で始動「日本版ハーバード」の凄い学び方 居住型キャンパスを立ち上げる29歳の挑戦

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小林氏も自身のハーバード留学時代をこう回想する。

「僕は18歳のとき、まだ見ぬ世界を求めて太平洋を渡りました。外交を勉強したくて留学を決めたのですが、ハーバードでは学ぶ内容以上に学びの環境の設計に魅了されました。僕にとって留学の想い出は深夜の食堂がすべて、数ある人生の決定をしたのも寮の食堂でした。5周年の同窓会で集まったときも、みんなで同じ寮に宿泊したほどです」

帰国後、小林氏が取りかかったのは、日本で前例のない国際的なサマースクール「HLAB(エイチラボ)」の創設だった。約1週間、国内外の大学生と寝食をともにするプログラムなどを提供している。

「エイチラボを起業した際に手伝ってくれたのもハーバードの寮の仲間です。東日本大震災の年に立ち上げたのですが、彼らの母国では日本へ渡航自粛となっていたのにもかかわらず、来日してくれました。彼らはいまでもいちばん連絡を取り合い、お互いに刺激を受け合う仲間です」

HLABのサマースクール(写真:HLAB)

ユニバーシティとカレッジの違い

サマースクールの卒業生は10年間で3000名に及び、いま世界中で活躍している。そして満を持して今年、小林氏が着手したのがレジデンシャル・カレッジの創設だ。

「日本ではユニバーシティもカレッジも大学と訳されますが、実はまったく別のものです。ユニバーシティは主に学位の提供や研究の場であり、カレッジは学生の共同生活を中心とした学びの場なんですね。もともとカレッジの原義はラテン語で、一緒に選ばれたという意味です。分野や世代を越えて共に時間を過ごし、学び合い、切磋琢磨しあうことがカレッジの本質です」

戦前の日本では、旧制高校は全寮制でありまさしくカレッジとしての機能を持っていた。しかしいま日本のキャンパスにはカレッジが失われてしまった。そこで小林氏はこう考えた。

「東京は電車で30分足らずの距離に、政治やビジネス、金融、そして学問の場がそろっている。世界中を見ても東京ほど世代や分野を越え多様な人材が集中する都市はありません。であれば、いっそ東京に大学から独立したカレッジを作ってみたらどうかと考えました」

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