「西洋文化の没落」が招いた現代の歴史的危機

スペインの思想家が「100年前に警告」したこと

人の「生」はつねにあらゆる「危機」に立ち向かいながら歴史をつくってきた(写真:photoschmidt/iStock) 
コロナ禍の中で、あらゆる「危機」が叫ばれている。「経済の危機」「生活の危機」「将来の危機」……。しかし、本当の危機は私たちの内面にこそあるのではないか。
このほど『近代の虚妄 現代文明論序説』を上梓した佐伯啓思氏が、スペインの思想家、オルテガの見た100年前の社会が陥った本質的危機の様相を通して、現代に問い直す。

オルテガの「歴史の危機」とは

スペインの思想家、オルテガは「社会とは何か」と問われ、それは端的に「握手することだ」と答えた。握手に合理的な理由などない。ただ他人と出会えば、西洋人は双方とも手を差し伸べて握るという行為を習慣化しただけだ。

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日本人は、何の因果か、お辞儀をするという習慣を持っている。だがこの習慣こそが他者との安定した関係を作り出してきたのである。もしも社会とは人々の関係だというのなら、握手やお辞儀がなければ社会は存在しないであろう。

そのような共通の「生きられた信念体系」がもはや自明のものではなくなり、しかし、それに代わる新たな価値はまだ試行錯誤の中をさまよい、その両者の間で人々の生は揺れ動き、落ち着かない、こういう時代がある。人々が安心して「寄りかかる」ものが存在しない。

これが「危機」なのであり、こういう状態は、ヨーロッパの歴史において3度、顕著な形で現れたというのである。

繰り返して言えば、古代のそれなりに安定していた(確かな信念体系を保持していた)ローマの共和制が終わり、キリスト教や王制を軸にする中世が形成されてゆく時期であり、第2に、その中世の価値観が崩壊し、ルネッサンスをへて近代へと移行する時期である。

そして、まさしく現代もそれに次ぐ、信念体系の大きな動揺の時代である。これがオルテガの考えであった。

私は、さしあたりはオルテガのいう「歴史の危機」という考えを受け入れようと思う。われわれの生きている現代が「歴史の危機」の兆候に満ちているのをみていこうと思う。

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