自分の評価を極端に気にする人が心を病む理屈 不安が高じて孤立すればますます行き詰まる

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言われてみればインターネット上に蔓延する“人を蔑む言葉”の数々も、その多くは相手の“不都合な真実”をあげつらったものばかりだ。また、人が“不都合な真実”に敏感になってしまいがちだという指摘を目にして、自分自身にも当てはまると感じた人もいるだろう(かくいう私がそうであった)。

もちろん、そうしたことを大した問題ではないとやり過ごせる人もいるはずだ。とはいえ小さなストレスであったとしても、それらが積み重なれば、なにか別の困難に遭遇したときの抵抗力が大きく後退することになる可能性はある。

その結果、神経が過敏になって、アルコール依存に走ったり、他人の発言に過剰反応したり、怒りっぽい性格だと見られたりするようになるわけだ。一方、神経質になれば、ますます引っ込み思案になるということも考えられる。

失敗を気にしすぎてうつになったケースもある。人と楽しい付き合いのできない人は、軽度とはいえ人間に対する被害妄想に陥ることがある。こうした困難が積み重なれば、病気のふりをして職場を欠勤するケースが増え始める。気晴らしを求めて過剰な飲食に走り、喫煙がますます止められなくなる。このような行動自体が他人に見られては困るものであり、人との接触をさらに避けようとする原因になる。こうして社会的な孤立が深まっていく。(33ページより)

社会不安が高じて孤立するのはとても危険

これがやや極端な例であったとしても、似たような傾向は現代を生きる人々の中に多少なりとも存在するように思える。しかし著者も言うように、社会不安が高じて孤立することはとても危険だ。孤立すればするほど、そのはけ口を外部に向けようとするものでもある。

それは、ネットやSNSを通じて他者を必要以上に糾弾してしまうような流れとも、どこかでつながっているような気がしてならない。

親しい友人や仲間、良好な人間関係、積極的な社会参加は、健康にとってきわめて有益である。社交不安は友達との付き合いを減らし、地域との絆を弱め、社会的な孤立を深めていく。その結果、健康への直接的な被害だけでなく、その他の病気を誘発させる原因になり寿命を縮めてしまう。友情が、いかに健康にすばらしい恩恵をもたらすか。(33ページより)

世界中の至るところで、あるいは個々人の周囲で分断が深まる状況にあるからこそ、改めてこのことについて考えてみてもいいだろう。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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