自分の評価を極端に気にする人が心を病む理屈 不安が高じて孤立すればますます行き詰まる

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ここで注目したい長期研究の1つが、1952~1993年にアメリカで行われた調査だ。特徴的なのは、この40年の間に学生のグループ、成人のグループともに不安感のレベルが大きく増大していること。

報告書の担当者は、「1980年代のアメリカの平均的な子供は1950年代の精神病患者の子供よりも高い不安感を持っている」と結論づけている。(25ページより)

イギリスでもキングス・カレッジ・ロンドンの研究者によって似たような結果が明らかにされており、しかも心の病が拡大傾向にあるのは男子、女子とも同じ。両親と一緒に住んでいるか、一人親や義理の両親と住んでいるか、貧困地域で生活しているか、いずれの生活環境においても心の病は拡大傾向が続いている。

アメリカ心理学会による2017年の調査では、80%のアメリカ人が無力感、うつ、神経過敏、不安など複数のストレス症状を抱えていることがわかっている。ストレスの度合いを1(まったく感じない、あるいはほとんど感じない)から10(かなり深刻)で自己診断してもらうと、回答者の20%が8、9あるいは10の高レベルだと答えているというのだ。

また、最も一般的であると言える不安やうつ以外の気分障害、衝動制御障害、物質依存障害などでも増加傾向が見られるそうだ。

心の病のすべてが増加していることは、その背後に何か共通の原因があると考えざるをえない。不安感も当然、そうした原因の一つであることは間違いない。(25ページより)

私たちの“不都合な真実”

その原因を簡単にまとめることなどはできないだろうが、注目に値することは当然ある。その1つが、私たちの“感じ方”だ。社会的な外見を気にする風潮が蔓延していると、著者は指摘するのである。

たとえば、私たちの大半は他人からどう見られているかを心配し、周囲から受け入れられるかどうかは、自分の“不都合な真実”を隠し通せるかどうかにかかっていると考えている。“不都合な真実”とは、他人の目に映る自分の不格好な姿だ。たとえば、無知や無学に見えたり、若々しさに欠けたり、あるいは失業中の人間や低賃金労働者、初期段階のアルコール依存症患者、ユーモアのセンスのない人間、気の利いた短いスピーチもろくにできない人間などに見えることだ。つまり“不都合な真実”とは、私たちの評価を引き下げるものすべてだ。(32ページより)
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