日本初「野菜ジェラート店」に行列ができる理由 雪が積もる「鳴子」で冬でもしっかり売れる
その年の春、鳴子に帰郷した。1000年以上の歴史を持ち、長らく美肌の湯と称えられてきた鳴子温泉で湯治をしようと考えてのことだった。
母親のツテもあり、肌にいいと評判の温泉に毎晩通った。娘を心配した母親はたびたび大澤さんを車に乗せて、緑豊かな自然の景色の中へ連れ出した。
少し元気が出てくると、母親が経営する飲食店を手伝うようになった。料理上手な母親の影響もあり、子どもの頃から料理やお菓子作りが好きだったのだ。
ある日、飲食店で使う野菜の買い出しで、初めて近所の「あ・ら・伊達な道の駅」を訪ねた大澤さんは目を丸くした。驚くほど大勢の買い物客でにぎわっていたのだ。買い物客のお目当ては、近隣の生産者が販売している、畑から収穫したばかりの新鮮な野菜だった。
試しにいくつかの野菜を買って食べてみたところ、東京のスーパーで買う野菜とは比べ物にならないほどジューシーかつ香り高い。とくにフルーツトマトは、「すごい、こんなおいしいトマトがあるんだ!」とほれ込んだ。それまで特に野菜が好きでもなかったのに、それからは毎日、道の駅で野菜を購入し、自宅でも食べるようになった。
それから、3カ月後。何をしてもよくならなかった顔の発疹が、ウソのように消えた。どんな皮膚科に行っても原因不明で治らなかった肌荒れが、鳴子の自然と温泉、そして野菜で治ったのだ。鏡を見ては傷つき、悩んできた2年間から解放された大澤さんの胸のうちには「やりたいこと」がふつふつと湧き上がってきた。
「小さいときは、鳴子っていなかだな、温泉もゆで卵くさいなって思ってたんですけど、その自然こそが、ここの宝だと思いました。だって、自然の力で元気になるってすごいことですよね。でも、小さい頃にはよく見た、丹前に下駄をはいて、からんからんって歩いている観光客の姿が少なくなって、町が昔よりも静かになっちゃった。それを実感したときに、どうにかしなきゃ、と思ったんですよね」
大澤さんは大好きだった東京に別れを告げ、地元に帰る決断をした。26歳のときだった。
道の駅を巡っていたら閃いた
母親のお店やカフェで働きながら、野菜とフルーツについて改めて学ぼうと、2007年、野菜ソムリエの資格を取得。それから、本格的に母親のお店を手伝うようになった。
学べば学ぶほど野菜とフルーツへの情熱が高まり、地元の道の駅でおいしい野菜を見つけると、包装紙に記されている生産者の連絡先に電話をして、農場を見学し、直接、野菜を仕入れるようになった。車で走っていて、おいしそうな野菜を作っている畑を見つけると、そこで作業している生産者に声をかけて、その場で野菜を売ってもらうこともあった。
野菜やフルーツがどう美容や健康に影響しているのかをもっと知りたいと、2009年にベジフルビューティーセルフアドバイザーの資格を取得。さらに、鳴子温泉の魅力も発信できるようにと、温泉ソムリエ、温泉ビューティーソムリエの資格も取った。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら