日本初「野菜ジェラート店」に行列ができる理由 雪が積もる「鳴子」で冬でもしっかり売れる

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「ジェラートが好きな人が集まる場なので、もっと好きになってもらいたい、ジェラートって楽しいと思ってもらいたくて、シーザーサラダのジェラートを出しました。結果的に審査員の方々には高く評価してもらいましたし、ガストロノミー・ジェラートとしての可能性はすごく感じましたね」

ガストロノミー・ジェラート。これはジェラートの本場イタリアで生まれた言葉で、「料理の中に取り入れるジェラート」を指し、現地で大きなムーブメントになっている。肉料理や魚料理のソースにしたり、クラッカーや生野菜につけて食べるディップにするイメージだ。

大崎産トマト(写真右)を使用した、大崎産トマトとオレンジのジェラート(筆者撮影)

実は、大澤さんもこの大会のメニューを決めるときにガストロノミー・ジェラートの存在を知ったそうだ。鳴子という小さな町で生まれた「お食事ジェラート」が、イタリアの最先端の流行とシンクロしていたのである。

日本発のジェラートで鳴子から世界へ

地元の鳴子温泉郷の観光客が減り、寂しくなった町を元気にしたいと思ったのが、2004年。それから16年が経った今、なるこりんのジェラートを目指して、東北各県、さらには関東などから大勢の人が大崎、そして鳴子にやってくるようになった。

「鳴子ってすごい雪が降るでしょ。そんな雪の降るところでジェラートですか?」とバカにされたが、冬もしっかり売れている。カップジェラートの通販を始めたことで、販路は全国に広がった。寒い日だって、温かい部屋でジェラートを食べたい人が大勢いるのだ。

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大澤さんが次に見据えているのは、野菜ジェラートとお食事ジェラートで、日本の文化や野菜の魅力を世界に届けること。2021年、イタリアで世界大会が開催される。日本人の枠は3。1つは「ジェラートワールドツアージャパン」の優勝者に決まったが、あと2枠残っている。そのうちの1枠を勝ち取り、世界を舞台に野菜ジェラート、そしてお食事ジェラートを披露したいと考えている。

「なるこりんの仕組みって、いろんなところで使えると思うんです。日本にはおいしい野菜を作っているところがたくさんありますよね。いろんな地域の生産者と組んで、素材の味を大切にした日本らしいジェラートを作って、世界に発信したいなと思っていて。

そのジェラートを通して日本に興味を持った外国の人が旅行に来たり、みんなにもっと野菜を食べてもらったり地域を知ってもらうようなお手伝いができたらいいなと思っています」

川内 イオ フリーライター

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かわうち いお / Io Kawauchi

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターとして活動開始。2006年夏、バルセロナに移住し、スペインサッカーを中心に各種媒体に寄稿。2010年夏に帰国後は、編集者としてデジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部で勤務。2013年6月より、フリーランスのエディター&ライター&イベントコーディネーターとして活動中。スポーツ、旅、ビジネスの分野で輝く才能やアイデアを追って各地を巡る。

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