日本人がゾッとするアメリカ超監視社会の現実 データを集める警察を市民はチェックできるか

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EFFはまず、教授たちに狙いを説明し、協力を呼びかけた。教授たちは、インターネットを使った情報収集を学生たちの課題やボーナスポイントの宿題として出す。学生たちが特設のウェブサイトにアクセスしてメールアドレスを登録すると、画面には課題が表示される。30分ほどネットで検索すれば見つけられるような簡単な課題だ。公開までの18カ月間で、約5500件のデータが集まったという。

そうやって完成した「監視の地図」は今年7月に公開された。9月30日には、KTVUテレビ(カリフォルニア州オークランド)がこのデータベースを使って、ナンバープレート認識カメラの問題を報じるなど、既存マスコミの報道にも活用されるようになってきた。

いま、アメリカメディアが手がける調査報道は、自らの力のみで成り立っているのではない。EFFの「監視の地図」のように、権力を監視し、独自に調査する数多くの非営利組織がそれを支えているのだ。そして言うまでもなく、非営利組織の運営を支えるのは、一般市民たちである。

大企業と警察の癒着、自宅の監視カメラの情報が警察に

警察の監視システムは日進月歩で進化を続けている。いま、とくに問題になっているのは、アメリカ全土に広がる大企業と警察の連携だ。その点で、マースさんは家庭用監視カメラ会社「リング(Ring)」に着目している。2018年にアマゾンが約10億ドルで買収し、アマゾン傘下の子会社となった。

リング社が販売するのは、玄関などに設置するスマート監視カメラ「ドアベル・カメラ」と、それに連動するスマートフォンアプリ「ネイバーズ(Neighbors)」。玄関のドアを開けずに訪問者を確認、録画することが可能だ。アプリ上では、地域の人たちと動画を共有したり、不審者などの情報を投稿したりできる。さらに警察は「ネイバーズ」アプリに事件・事故などの情報を投稿できるだけなく、市民が投稿した動画を閲覧し、さらに市民に対して録画した動画の提供を求めることもできる。

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