ワタミが「焼肉」へ大胆転換せざるを得ない事情 ウィズコロナ戦略で居酒屋の3分の1を新業態へ

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これは細かくいえばセントラルキッチンにどれだけ工程を委ねるかという割り切りにも関係してきます。セントラルキッチンのある大手焼肉店でも品質にこだわるお店は、枝肉を部位ごとに切り出すとそこで真空パックして店舗に配送します。店舗では職人さんが注文に応じて包丁で肉を切る。そうすればよりおいしく焼肉を提供できます。

しかし冷凍技術や保存技術が進んでいるいまではセントラルキッチンで肉を一口サイズに切ったうえでパッキングして、店舗ではそれをならべるだけというオペレーションも可能です。実際サイゼリヤはこの方式でやっていて、サイゼリヤの厨房には包丁がないことで知られています。

実際に「焼肉の和民」を訪れて見えたのは?

まだ「焼肉の和民」の場合、2店舗(大鳥居駅前店=東京都大田区、横浜店=横浜市西区)がグランドオープンした段階でどこまで生産性を重視していくかはこれから絞っていく段階だとは思います。

実際に店舗を訪問してみたところ、オープン数日後の段階ではたくさんの従業員が忙しそうに働いていらっしゃいました。しかしそれでも本来、焼肉業態は居酒屋業態と比較して厨房の人数はデフォルトで少なく設定することができます。仮に包丁をなくし、サイドオーダーの調理もなくせば、人員数はかなり圧縮できる余地はあるはずです。

「三代目 鳥メロ」のように和民のブランドを冠さない戦略ではなく、あくまで「焼肉の和民」というブランドを掲げました(東洋経済オンライン編集部撮影)

同時に「焼肉の和民」では回転寿司チェーンと同じように自動レーンで焼肉を届けたり、ロボットでの配膳を試行したりしています。これらの工夫も将来的に従業員の人数を少なくしたオペレーションを追求するにあたっては有効です。

飲料のドリンクバーでの提供はウィズコロナ時代には消毒など、従来よりは手間がかかると思われますが、このあたりは試行錯誤という感じでしょうか。

そもそもタッチパネルでの注文もグローバルにみれば時代遅れで、デジタルトランスフォーメーション時代であればQRコードを読み込んでスマホで注文するほうが合理的です。ただこういった遅れている箇所があるというのは、言い換えれば「焼肉の和民」にまだまだ生産性改善の余地、つまり利益向上の余地があるということでしょう。

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今回のニュースをまとめてみると、ワタミが焼肉店に業態転換するというのはウィズコロナ時代を見据えた飲食店経営の戦略として学ぶべき点がたくさんあると思います。中でも今回取り上げた、アフターコロナでの生産者の需給に着眼することや、業態転換をする中で生産性向上を試行していくことは多くの飲食店経営者にとっての示唆があるように思います。

ただ個人的には早く居酒屋で騒げる日常が戻るといいなとは思っていますが、それはまた別の話ですね。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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