そこであくまで数量限定ということではあるのですが、大手飲食チェーンの特別メニューとして黒毛和牛商品が比較的手が届きやすい価格で登場しました。ここまではコロナの真っ最中のありえそうな出来事ではありました。しかしここでアフターコロナはどうなるのかという新しい問題があります。そこでワタミなのです。
アフターコロナでも居酒屋の売り上げは7割しか元に戻らないというのがワタミの想定ですが、その想定が正しければ高級黒毛和牛の生産者にとってもウィズコロナ時代には黒毛和牛の需要は7割程度しか元に戻らないことが考えられるかもしれません。ここでワタミが「独自にブランド牛の和民和牛を開発した」という話に意味が出てきます。
ウィズコロナの時代、黒毛和牛の生産者組合も需要構造を変える必要が出てきます。短期的にはトリドールや吉野家に提供したような形で期間限定メニューで余剰在庫をさばくとしても、長期的に需要が戻らないとすれば長期安定的に供給できるエンドユーザーが必要になる。ワタミと生産農家がこのようなタッグを組み始めたことがまずウィズコロナ時代の未来の和牛の需給を予感させる最初のポイントとして注目すべき点だと思います。
もっと少ない人数で同じサービスを提供できないか
さて、ウィズコロナ時代の経営に関する2つ目の視点は生産性です。飲食店の経営者にとってアフターコロナになったとしても以前のようには顧客が戻ってこないことが1つの悩みです。短期的に顧客が減ったのも確かですが、長期的に減った顧客の一部は二度と戻ってこない可能性がある。ではどうすればよいか? 店舗運営の生産性を変える必要があるのです。
たとえウィズコロナ時代に収入が減ったとしても、店舗経営の観点ではコストも下がれば利益は維持できる可能性があります。ただ飲食店の場合、食材の原価を下げるわけにはいかないとすると、最もカイゼンしやすいのは従業員の人数です。もっと少ない人数で同じサービスができないかを飲食店経営者が考えなければならない時代なのです。
東京の目黒にラッセというイタリア料理店があります。ミシュラン一つ星の高級店なのですが、ほかの飲食店がコロナで大打撃を受ける中で今年3~5月で黒字を出したことで注目を集めました。
ラッセのオーナーシェフの村山太一さんはとても面白い発想をする方で、9年間ミシュランの星を維持する一方で、このままではだめだと考え2017年に休日はサイゼリヤでバイトを始めます。そこでサイゼリヤのさまざまな生産性向上手法を観察し、それをラッセに持ち込みました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら