中東の真ん中で「京都」に出合った これが日本のインバウンド政策に欠けている視点だ
このブースは、京都文化交流コンベンションビューローという京都市の外郭団体が、ホテルグランヴィア京都、芸舞妓を派遣するアタシェ京とともに企画して初出展したものだという。今年のアラビアン・トラベル・マーケットに出た日本のブースは、ここだけだった。
「現地での反応は上々」
現地に来ていた京都文化交流コンベンションビューローでインベンション課長を務める土井里枝さんは、「人口は少なくても裕福な国が多く、旅行者として使ってくれるおカネは大きい。そんな中東からの観光需要を狙いに来ました。現地での反応も上々です」と話してくれた。
日本は昨年、訪日外国人観光客(インバウンド)が初めて年間1000万人の大台を突破。2020年に東京五輪開催が決まったことを追い風に、日本政府はインバウンドを2000万人へと倍増することを目標として掲げている。
その軸を担うのが、アジア諸国からの旅行者だ。アジア諸国は経済成長が目覚ましく、人口も多く、日本からも近い。訪日外国人は、ざっと7割強がアジアから来ており、日本の観光関連産業もその視点で動いている。昨年8月、タイのバンコクで開かれた国際旅行博の来場者に聞くと、「会場で最もにぎわっていたと感じたのはジャパンゾーン(日本の出展ブース)だった」という。
一方、「現状は日本政府の施策に中東は重点地域として含まれていない」と土井さんは言う。中東と日本の距離は確かに遠い。億単位の人口を抱える国が多いアジア諸国と比べると、たとえばUAEの人口は約800万人と少なく、訪日観光者の絶対数はそれほど見込めない地域かもしれない。
ただ、中東から日本の飛行時間は、欧米から日本のそれとそう大差ない。原油や天然ガスなどの生産で潤う中東諸国の1人当たりGDP(国内総生産)は、カタールが9.7万ドル、UAEが6.3万ドルと、日本(4.6万ドル)よりも高い。アジアはシンガポールが同5.1万ドルと突出しているものの、たとえばインドネシアは0.3万ドル、中国で0.6万ドル、マレーシア1.0万ドルなどだ(GDPはいずれも名目ベース、2012年)。