外来種を悪とする「池の水ぜんぶ抜く」の疑問点 テレビ番組だけではわからない問題点もある

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番組を見た方の印象は、かいぼりとは、水を抜いて外来種の魚などを捕まえる手段といったものでしょうか。また、外来種とは危険な悪者で駆除するべき存在とも感じるかもしれません。しかし、実際のところ、それだけでは誤解だといっていいでしょう。

兵庫県東播磨県民局が出している「東播磨 かいぼり・外来種駆除マニュアル」には、次のように書いてあります。

「稲の収穫期後の冬に、ため池の水を抜いて干し、底にたまった泥を取り除いて、ため池にひび割れや水漏れがないか等を点検する作業のことです」

昔のかいぼりとは、あくまで稲作のために水をためておくための池という設備のメンテナンス作業だったことがわかります。そのうえで、この手法を使うと外来種の魚やカメなどを効率よく捕まえて駆除ができることに注目したNGOなどが行い、少しずつ広めていきました。

外来種は果たして悪者なのか

また、「外来種は悪者」というような番組の視点も、わかりやすいようで間違っているところがあります。外来種とは、人間の活動によってほかの地域から持ち込まれてきた生き物であり、それ以上でもそれ以下でもなく、善悪とは関係のない概念です。 

例えば、野菜や家畜、ペットなどは、ほとんどが海外の原産であり、定義としては外来種ですが、私たちの生活になくてはならない存在でもあります。イネに至っては、縄文時代に日本に持ち込まれた作物ですが、今は私たちの主食です。その栽培環境である水田は、日本の里山の風景であり、水生生物などの重要な生息場所にもなっています。

こうした、人が管理できて、生態系への悪影響やリスクを考えなくてもいいような外来種までも駆除する必要はありません。あくまで健康や農業、生態系といった、人にとって重要なものに対して害を及ぼす場合にその悪影響を取り除く必要があるということです。

ただ、外来種についてはその悪影響やリスクがよくわからないこともあり、なるべく新たに持ち込まない方がいいということは認識しておく必要もあります。外来種であるかどうかそのもの、ではなく「生態系や人の社会に害やリスクがあるか」という観点で、外来種をとらえる考え方は極めて重要です。

かいぼりに話を戻すと、外来種が憎くて行うわけではありませんし、駆除そのものが目的でもありません。その目的は、ため池に元々すんでいた在来種の魚や水生昆虫のいる本来の生態系を取り戻すことです。外来種の駆除によって、悪影響を取り除くのは、目的のための手段にすぎません。

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