北海道で「核のごみ処分場」に続々手が挙がる訳 背景には人口減や財政難など複雑な事情がある

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寿都町、神恵内村が文献調査受け入れに向けて一歩踏み出したことで、この先、状況はどうなっていくのか。まだまだすったもんだがありそうだ。

反対派の動きが強いのは寿都町だ。反対派の団体が片岡町長に応募を取りやめるよう求める署名活動を展開し、署名は800人を超えた。団体側は町長の解職請求(リコール)も視野に入れながら、応募の是非を問う住民投票の実施を目指して新たな署名活動を始め、7日に約200人分の署名を町に提出した。これに対し、町長は住民投票に否定的で、「大半が賛成で、やる必要がない」(1日)などと語っていた。

そうした中、8日未明には、片岡町長宅に火炎瓶のようなものが投げ込まれ、玄関横の窓が割られ、周辺が焦げるという事件があり、町内に住む77歳の男が現住建造物等放火未遂の疑いで逮捕された。警察の調べに対し「“核のごみ”最終処分場に反対していた」という趣旨の話をしていると報じられている。

一方、神恵内村で行われた住民説明会では「村の人口がどんどん減っていて将来が心配。将来を考えると文献調査をやるのは1つの選択だと思う」「隣の泊村に原発が建っている以上、村も何か考えなくては。文献調査は受け入れてもいいという気持ちになっている」など理解を示す意見が相次いだと報じられている。

とはいえ、賛成ばかりというわけではなく、村民の間からは「負の遺産を子どもに残せない」という反対論や請願や議論の進め方への疑問の声も出ていた。

最近はトーンダウン気味の知事

前のめりになる自治体に対し、核のごみの道内持ち込みを「受け入れがたい」とする❝核抜き条例❞がある北海道の鈴木直道知事はどう対処するのか。

8月に片岡町長の応募検討意向が明らかになった直後は「寿都町は拙速」と強く牽制し、20億円の交付金を提示して文献調査の候補を募る国のやり方にも「頬を札束でたたくやり方」と批判していたが、最近はどうもトーンダウン気味だ。

9月30日の道議会では、寿都町の動きに対し「慎重な判断を」と言うばかりで、応募への反対を求めた野党議員の質問には「文献調査は条例の趣旨と相容れない」とつれない回答。当初の歯切れのよさが失われている。

鈴木知事のトーンダウンについては、「知事が市町村に口出しをするのは地方自治に対する侵害」といった道議会自民党の反発や、梶山弘志経産相との会談で「調査では核のごみは持ち込まない。条例には反しない」と言われたことがネックとなり、踏み込んだ発言ができないとの見方がある。さらには、❝後ろ盾❞ともいわれる菅首相の存在が大きいという指摘もある。

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