「父親は殺人犯」女子高生の娘が生きた壮絶人生 「君たちを守るためにやった」に号泣した理由

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この日は眠れませんでした。深夜、幼なじみに電話をかけて、何を話したかは覚えていませんが、2人で大泣きしていたところに、母親が帰宅します。このとき架純さんは、父親が覚せい剤で捕まった過去を知っていることを伝え、父親から来た手紙を読んだことを謝ったところ、母親は「架純が知っててくれて、よかった」と言ったそう。すべてを自分の口から説明せずに済んで、ほっとしたのでしょう。

その後、架純さんたちは、警察から事情聴取を受けました。何を聞かれたかは覚えていませんが、ずっと「ドラマみたい」と感じていたそう。あまりのショックの大きさに、現実を現実として受け止めることを、脳が拒否していたのかもしれません。

「親父さん、刺しちゃったんでしょ」泣いて帰った弟

心配になるのは周囲の人々の反応ですが、当時弟が通っていた中学校の対応は、ありがたいものでした。以前、架純さんの担任をしていた先生がちょうど弟の学年におり、報道を見て「架純の家では」と気づき、連絡をくれたのです。そこで3人で中学校へ行き、母親は校長と弟の担任と話をし、その間、架純さんと弟は、連絡をくれた先生などと話をしました。

「いま何がいちばん心配か、と聞かれたんですけれど。その亡くなった方には、私たちと同じくらいの子どもたちがいたんです。そこもシングルマザーだったから、それがすごく心配で申し訳なくて。その子たちはどうなっちゃうんだろうって、本当に申し訳なくてしょうがなくて。そのことばかり言っていました。

ママたちも話が終わって家に帰ろうとしたとき、私、本当にそれまでお母さんが泣いた姿を一度も見たことがなかったのに、そのとき初めてお母さんが先生たちの前で、『本当にありがとうございます』って言って涙を流したのが、すごい衝撃で、覚えています」

世間では残念なことに、犯罪加害者の家族を犯罪者と同一視して、差別する人もいます。でも架純さんの通った中学校は、そのようなことがないよう、静かに、かつ速やかに配慮をしてくれたことは、心底ありがたいことでした。

なお、架純さんが当時通っていた高校には、近所の生徒があまりおらず、事件に気づく人はほとんどいませんでした。電話で一緒に泣いてくれた幼なじみがずっと同じクラスだったこともあり、周囲の差別でつらい思いをすることは、幸いなかったと言います。

「ただ、弟は本当にかわいそうでした。中学は近所の子がたくさんいたので(みんな父親の犯行を知っており)、何か言い合いになったとき『おまえの父ちゃん人殺しのくせに』と言われたり、部活の先輩に『おまえの親父さん、刺しちゃったんでしょ』と言われて、なんかさめざめと泣きながら帰ってきたりしこともあったらしくて。でも、ちゃんと学校に行き続けたんですよ。本当にすごかった、えらかったと思う」

弟がそれでもなんとか通い続けられたのは、おそらく、中学の先生たちのフォローのおかげもあったのかもしれません。

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