「県」ではなく、「市」「町」単位で事務所を開設した理由には、小規模な市町が主体となって、それぞれの特産品を売り込みたいという思いが背景にある。笠原氏によれば、県主導で行われる特産品などを紹介する大規模なイベントなどでは、どうしても県レベルのブランド特産品が強く打ち出されがちで、小規模な市町の特産品を扱ってもらうのは難しい点もあったという。公平性の観点から、特定の自治体の商品ばかりを取り上げにくいからである。
だからといって、単独で海外に出ていけるほど、小さな市や町には資本もない。そうした背景の中で、佐賀県武雄市長の樋渡啓祐氏が旗振り役となり、自治体が運営するJAPANsgに参画する市や町などを巻き込むかたちで、今回の事務所が開設されることになった。このプロジェクトの検討が開始されたのが2012年の10月ころからだというから、かなりスピーディな展開といえるだろう。
自治体が東南アジアに拠点を置くことにした理由のひとつが、成長著しいASEANの需要を少しでも取り込むことである。そのために東南アジアのショーウィンドーといわれるシンガポールを最初の第一歩にしたいと考えた。
アジアの「人・モノ・カネ」を動かす地方の武器
同事務所が東南アジアで特に打ち出していきたい各自治体の特産品を紹介してもらった。北から、まず、燕三条地場産業振興センターは「金属食器」。匠の高度な技と知恵による鎚起銅器や利器工匠具、金属洋食器や金属ハウスウエア、アウトドア用品や作業工具、理美容器具など。東南アジアでは、主にレストランやホテルなどを対象にプロユースの商品を紹介していく。3月にはアジアで初めてシンガポールで開かれる世界3大消費財見本市「メゾン・ド・オブジェ」にも出展し、積極的にPRを行っていくという。
富山県南砺市は、「五箇山合掌造り集落」。1995年に世界遺産に登録された集落で、「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」では最高評価の3つ星で紹介されている。世界遺産の合掌造りの民宿に泊まって、和紙すき、雪山のトレッキングなど昔ながらの生活文化に、体験を通じて触れることができる。観光だけ、食だけではなく、これらをパッケージ化して、「人が動く、モノが動く、カネが動く」ことを目指していきたいという。
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