新・お昼の顔?「徹子の部屋」成功のナゼ 視聴率2冠王、テレ朝の知られざる戦略性

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たとえば、5月7日(水)の放送だと次のような感じでした。

■11:59 「ワイド!スクランブル」第1部の終わりに、司会の橋本大二郎さんと大下容子アナウンサーがスタジオで「徹子の部屋」の前振り。「きょうの徹子の部屋は……」
■12:29 黒柳徹子さんが、徹子の部屋のスタジオから、上沼恵美子さんに呼びかけ。「続いては上沼恵美子さんです。どうぞよろしく」
■12:44 「ワイド!スクランブル」第2部の始まりで、「上沼恵美子おしゃべりクッキング」の料理についての感想
■18:57 「スーパーJチャンネル」の終わりに、加藤真輝子アナウンサーがスタジオから、「このあとは、ナニコレ珍百景」
■20:51 「ミラクル9」の終わりに、スタジオから、くりぃむしちゅーの2人と小澤征悦さんが「ミラクル9のあとはTEAM」
■「報道ステーション」では、前が「相棒」の場合は、それを受けるときもあります。「相棒をごらんになっていた皆さん、こんばんは……」

 

確かにこれだと番組宣伝を制作する手間もおカネも省けるうえに、出演者が自分の番組ではなく他人の番組を宣伝するというのも、視聴者にとってはインパクトがあります。さらには生放送感(生放送は収録番組より視聴率が高くなることが多い)を出すこともでき、一石三鳥です。こうした出演者による「生つなぎ」は、アメリカの放送局でも見たことがありません。

番組宣伝のほかに、工夫しているなと思うのがCMの入れどころです。

たとえば、視聴率の王様、「相棒」の終わりにCMが入ることはありません。「相棒」の視聴者を1分1秒でも逃さないようにするためです。「相棒」から「報道ステーション」へはダイレクトにつながりますし、昼間、再放送中の「相棒」から「スーパーJチャンネル」にもダイレクトにつながります。「相棒」を放送しているときの「報道ステーション」の視聴率が高めなのは、そのためです。

12時に移転した「徹子の部屋」が好調なのは、テレビ朝日が戦略を持ってテレビ番組の編成に取り組んできたことの象徴ではないかと筆者は見ています。テレビの世界は、国の文化に根差しているものなので、どの国も自国流の制作や編成がありガラパゴス化しやすいのですが、経営と同じく、戦略が必要であることを教えてくれます。

佐藤 智恵 作家・コンサルタント 

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さとう ちえ / Chie Sato

1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして報道番組、音楽番組を制作。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。主な著書に『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、『ハーバード日本史教室』(中公新書ラクレ)、『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』(日経プレミアシリーズ)、最新刊は『コロナ後―ハーバード知日派10人が語る未来―』(新潮新書)。公式ウェブサイト

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