ポピュリズムが招くニヒリズムを不可避な理由 「日本的精神」の真髄が示す希望の兆しと可能性

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トランプ型統治の深層にある「西洋近代思想」の宿痾とは(写真:ロイター)
アメリカのトランプ大統領に象徴される「ポピュリズム」政治、それによって引き起こされる「ニヒリズム」といった近代の危機にわれわれは直面している。果たして、これらを乗り越えられる思想はあるのだろうか。
新型コロナウイルスの出現により世界的に未曽有の危機が続く今、希代の思想家・佐伯啓思氏が、その根本にある西洋近代の限界を縦横無尽に論じ、日本思想の可能性に希望を見いだす『近代の虚妄:現代文明論序説』がこのたび上梓された。
本稿では、現代に警鐘を鳴らす同書より一部を抜粋しお届けする。

文明のすぐ裏に待ち構える「死」

2020年が歴史に記憶される年になることは間違いないであろう。

『近代の虚妄:現代文明論序説』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

人類は、長い間、生存のために4つの課題と戦ってきた。飢餓、戦争、自然災害、病原体である。飢餓との闘いが経済成長を生み、戦争との闘いが自由民主主義の政治を生み、自然との闘いが科学技術を生み、病原体との闘いが医学や病理学を生んだ。すべて人間の生を盤石なものとするためである。そしてその高度化が文明を生み出した。

だが、この極北にある現代文明は、それを克服することができたのだろうか。決してそうとはいえない。飢餓はかつてに比すれば克服されつつあるといえるかもしれない。しかし、いまも述べたように、今回のような突然の新型コロナウイルスの出現によって、一気に生活の困窮を強いられる人々が出てくるのである。

またこの20年ほどで先進国の所得および資産格差は拡大し、資産をほとんど持てない困窮世帯は先進国にあって相当な割合に上るのである。

戦争についていえば、世界大戦のような大規模戦争は容易には起きないにしても、テロとの戦いや局部的な戦争は決してなくならない。しかも、文明が高度化すればするほど、戦争に使用される兵器は高度化し、それによる犠牲者は大きくなる。現代文明にあっては戦争とは、核による大規模破滅を意味しかねないのである。

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