過眠症に苦しむ人を「薬規制」がなお悩ませる訳

モディオダールの処方厳格化ははたして妥当か

「確かに、治療薬がほとんどなかった特発性過眠症に対するモディオダールの適応は、患者会の悲願でした。しかし――」と駒沢さんは話を続ける。

「しかし、その結果、モディオダールが規制されて一部の医師しか取り扱えなくなるのであれば、過眠症患者にとっては不利益でしかありません」

しかも規制の話は事後報告という形で知ったという。

「リタリンのときもそうでしたが、行政は当事者の意見を聞いてくれない。なぜ患者の声を聞かないで決めてしまうのか、理解できません」

実は、ナルコレプシーの治療薬の規制には前例がある。それまでナルコレプシーの第一選択薬だったリタリン(メチルフェニデート)が2008年1月、規制の対象となったのだ。

「当時リタリンは重症のうつ病にも適応があり、うつ病の患者さんにやたらと処方するクリニックが少なくありませんでした。その結果、不適切な処方による濫用や依存が問題になり、自殺者も出てしまった。社会問題にもなりました」(立花さん)

結局、リタリンはうつ病の適応から外れ、ナルコレプシーへの適応は残ったものの規制されることに。一部の医師しか処方できなくなった。

濫用を危惧する根拠はどこに

モディオダールもリタリンと同じ扱いを受けることに、立花さんは憤りを覚える。アメリカではリタリンよりも危険性の少ない薬に分類されており、シフト勤務で生じる睡眠障害にも用いられているからだ。

「モディオダールは安全性が高く、依存性がないというのが、売り文句。薬価もリタリンと比べてはるかに高く、手に入りにくい。濫用が危惧されているのであれば、根拠を私たちに示すべきです」

では、濫用の実態はあるのか。駒沢さんは言う。

「国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部が、2年に1度公表する報告書に『全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査』がありますが、そこには濫用があることは示されていません」

規制は9月1日から始まる予定だったが、コロナ禍で準備が遅れ、来年の4月1日にずれ込んだ。それ以降は、確定診断医、処方医、推薦医に登録した医師しか処方できなくなる。

確定診断医は診断と処方の両方の資格を持つが、処方医と推薦医はすでに診断された患者への処方しかできない。確定診断医になるためのハードルは高く、日本睡眠学会専門医であり、かつ施設基準をクリアした医療機関に所属していることが求められる。

一方、処方医や推薦医は、日本睡眠学会、日本精神神経学会などの専門医であったり、登録した医師の推薦があったりする場合に、登録が可能になる。だが、どれだけの医師が登録するかは未知数で、こうした医師が登録しないとなると、患者は会社や学校を休んで、何時間もかけて遠方の医療機関に薬をもらいにいかなければならない。

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