過眠症に苦しむ人を「薬規制」がなお悩ませる訳 モディオダールの処方厳格化ははたして妥当か

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「今でさえ県をまたいで薬を取りにいっている患者さんもいます。それくらい薬を処方してもらうのが大変なんです。それをわかっているのでしょうか」(駒沢さん)

前出の川崎さんは、モディオダールの規制の問題について多くの人たちに知ってもらおうと、自身のYouTube「Good Sleep Academy」で情報発信を始めた。規制によって新たな問題も表面化してくるのではないかと考えている。

「規制が始まれば、平日に働いている患者さんの場合、月1回、薬をもらうために遠方の医療機関に行く必要が出てきます。そうしたら有給をとらなければならず、上司にその理由を説明しなければならないかもしれません。患者さんのなかには、病気のことを周りの人に知らせず働いている人もいます。周囲の理解が得られにくい病気だからです。ただ、これが今回の件で職場にばれてしまえば、仕事にも影響が出るかもしれません」

なるこ会と、立花さんが理事長を務める日本臨床睡眠医学会は、厚労省に対して制度の修正を求めた要望書などを提出。なるこ会に対しては、期限が延期された旨の連絡は来たものの、見直しについての返答はまだ。医学会には「回答が困難」とのことだった。

厚労省「睡眠障害に精通した医師、医療機関で処方を」

厚労省に問い合わせると、医薬・生活衛生局医薬品審査管理課が対応した。

「モディオダールに限らず、一般的に濫用が懸念される薬については登録制を設けて、処方に制限をかけています。ただ、厚労省で決めているのは、『睡眠障害に精通した医師、医療機関のもとで処方してください』ということだけで、その担保の仕方は製造販売業者が設立した適正使用委員会に任せています」

これについて立花さんは反論する。

「委員会の委員には日本睡眠学会の理事が名前を連ねている。これまで過眠症の診断と治療をきちんと行ってきた、学会の会員ではない医師や施設に対する配慮が十分に成されているのか、疑問が残ります」

過眠症患者を悩ませる薬の処方問題。患者会は解決の道を今も探る。

「少なくとも、今まで処方してくれていた医師が引き続き処方できるような措置を講じてほしい。それだけでもありがたいのですが……」(駒沢さん)

鈴木 理香子 フリーライター

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すずき りかこ / Rikako Suzuki

TVの番組制作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆。今はホットヨガにはまり中。汗をかいて代謝がよくなったせいか、長年苦しんでいた花粉症が改善した(個人の見解です)。

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