トヨタにのしかかるリコール決断の代償
「たとえば実験回数を減らしたり、実車でなくシミュレーションの比率を増やしていないか。全部バーチャル、コンピュータ上で済ますというのでは、車が世に出た際に不具合の確率は増える」。アドバンスト・リサーチ・ジャパンの遠藤功治氏は、効率化、コスト削減優先による副作用を説いた。ほかに海外部品メーカーの採用による弊害など、グローバル化の負の効用もささやかれている。
まさに各方面から袋だたきに遭っているトヨタ。その反面、今回のプリウスの不具合については、リコールが妥当だったのか一部で疑問の声も上がっている。
リコール=悪なのか 冷静な視点が不可欠
国交省が示すリコールの条件とは、「道路運送車両法に定められた保安基準に適合せず、車両構造に欠陥がある場合」である。同省の板崎龍介・リコール対策室長によれば、これには「保安基準に適合しない恐れがある場合」も含まれるという。不適合ではないが安全上放置できない「改善対策」や、商品性改善のため行う「サービスキャンペーン」との線引きは、実は完全には明確でないのだ。それでもトヨタは、「発生件数の継続性を判断し」(豊田社長)、あえてリコールに踏み切った。
もう一つ、トヨタが新規生産したプリウスを修理していながら、すでに販売済みの車種にはしていなかったことも、「リコール隠しではないか」と指弾された。ただ国交省によると、こうした例は常時あることで、何らかの違反や法令抵触ではない。