今の40歳前後「非正規・未婚者」が抱く深い憂鬱 生活苦の「新しい中年クライシス」が起きている
中年期に人格の形成が確立の方向に向かう
19世紀後半から20世紀初頭にかけて心理学の発展に大きく寄与したフロイトは、幼児期における心理や人格形成がその人のその後の一生を決める上で重要な役割を演じると主張した。すなわち、幼児期の心理的葛藤が、成人期、あるいは中年期まで続くとともに、人格の形成に大きく影響を及ぼすと考えたのである。裏返して言えば、幼年期にある程度の心理特徴が定まれば、それ以降は比較的安定した心理状態が続くのである。
しかしフロイトの弟子であったが、彼から去ったユングは中年になって人間の心理は大きく変容することがあると主張し、中年期における人間の心理を探求することの重要性を説いた。
なぜかといえば、中年になると職業を持って仕事をして所得を稼ぐようになるし、結婚して子どもを持って家族を形成するので、まわりの人との付き合いが多くなる。子どものことで悩むことがあるし、中年後半になると親の介護の問題が発生し、それらが心理的な変容と葛藤を生む可能性があると考えた。それによって自己を見直す機会が与えられるので、人格の形成が確立の方向に向かうと考えたのである。
日本におけるユング心理学の継承者である河合隼雄が、「中年クライシス」を論じたのもその影響であると理解できる。河合の著書『中年クライシス』(朝日文芸文庫)、『多層化するライフサイクル』(岩波書店)によると、若年代や中年前期においては、仕事、社会的地位、財産を築き、そして家庭を持つことに必死になるので、自分は何のために生きているのかとか、自分は何者なのかというアイデンティティの問題、自我が何を基礎としているのかなどを考える余裕がなく過ごしてしまうとする。
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