菅政権のデジタル改革が日本株再評価のカギに

ゴールドマンのキャシー松井氏に聞く

――著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイによる日本の5大商社株の大量取得が8月末に発表されましたが、日本に対する見方が変わったのでしょうか。

バフェット氏は何年もの長期的視野で投資するスタンスであり、日本株が世界的に見て割安だと考えたためだろう。実際、PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)、配当利回りを見てもアメリカ株よりかなり割安だ。

ただし、「安くなっている理由」はある。見た目は安いが、重要なのは、会社が持っている価値や現預金が株主の手に入るかどうかだ。その意味で日本企業は全般、ROE重視やコーポレートガバナンス(企業統治)でアメリカ企業に後れを取ってきた。株価が安いのは、グローバルスタンダードではないと見なされているためだ。

日本でも近年、持ち合い株式の解消や社外取締役の拡充などガバナンスに改善は見られる。改善がなければバフェット氏も投資しなかったのではないか。将来的な株主還元のポテンシャルがあると考えたのだろう。かつて1990年代にはドイツが株式持ち合いなど非効率な市場の改革を進めたが、日本は今、同様のターニングポイントに立っている。

日本にも「GAFA」が必要

――海外投資家が日本株をオーバーウエイトするかどうかは、さらなる改革次第ということですね。

そうだ。日本市場のもう1つの弱点は、海外投資家の間で「世界景気に非常に敏感な市場」という超単純なレピュテーション(評判)が定着してしまっていることだ。実際、TOPIX(東証株価指数)の構成銘柄の中で鉄鋼や自動車、金融などの景気敏感業種は約7割を占め、世界的にも高い。グローバルな景気サイクルがよくなると日本株が相対的に大きく上がるが、逆に景気サイクルが悪くなるとものすごく下がる。

これに対してアメリカではいわゆるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のような断トツ企業が市場の最高値更新を牽引している。こうしたグローバルドミナント(世界で独占的)な成長企業がもっと日本にあれば、海外投資家に見直されることになる。

もちろん少数銘柄への集中リスクは考慮すべきだし、GAFAの株価チャートを見れば怖くなるほどだ。とはいえ、2000年前後のITバブル期とは違い、(上場米国企業の)PERは平均20倍台に過ぎず、利益もキャッシュも生み出している。

要するに、日本株を海外投資家が積極的に買える状況をつくり出すことが重要だ。成熟産業ならもっと株主還元を増やす。成長産業ならば積極的に技術に投資したり、M&Aをしたりする。やればやるほど海外から資金が入ってくるようになるだろう。

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