8月28日に安倍首相が辞任を表明し、日本の政治情勢は大きな転換点を迎えた。その後、自民党総裁選に菅官房長官が名乗りを挙げた。主要な派閥首領が同氏の支持を表明する中で、金融市場では9月半ばの菅政権誕生がすでに基本シナリオとなった。
菅氏は官房長官、すなわち安倍政権の顔、右腕として圧倒的な存在感を示してきた。病気で辞任する安倍首相の意志を継ぐことは、有権者にも分かり易い政治的な大義になるだろう。菅政権が誕生すれば、コロナ危機管理内閣として政策の継続性が全面に打ち出され、2012年末から続く安倍政権の経済政策はほぼ維持されると予想される。
安倍政権は相応の実績を残した
第2次安倍政権は、約8年の憲政史上最長の政権となったが、6回の国政選挙において安倍首相率いる連立与党は国民の信任を得ることに成功した。特に平成以降の日本の首相の在任期間が短かったことを踏まえると、日本の選挙制度で長期にわたり政権を保つことは、かなり困難と言える。
安倍政権に対する評価は様々だろうが、批判はするが健全な政策論争を行わないように見える野党に対する国民の信頼が高まらない一方で、安倍政権が相応の実績を残して国民の期待に一定程度応え続けた、というのが客観的な事実だろう。
外交面では、米国を中心とした民主主義体制の親密国との関係強化、TPP協定を実現して自由貿易推進の旗振り役になった、などが主な成果だろう。それ以上に国民の支持を高めたのは、発動した経済政策によって2013年から経済状況が大きく改善したことだと筆者は考えている。
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