「菅政権」は安倍政権以上に成功の可能性がある 今まで使われていない有効な手段が残っている

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2000年代半ばの小泉政権は平成以降では数少ない長期政権だったが、この時期も総じて経済状況改善が続いた。公務員などを除く多くの国民が市場経済のルールに直面している日本では、頻繁に選挙民によるチェックが行われるので、その政治基盤は経済政策の出来と経済状況が大きく左右するだろう。

2013年以降の経済正常化を端的に示すのは労働市場の環境改善である。コロナ禍前の2019年12月には失業率は2.2%まで低下したが、1992年以来約30年ぶりの水準まで戻った。1992年当時は、1980年代後半のバブルが崩壊してから2年が経過して経済悪化が始まっていたが、それでも労働市場の需給バランスがなんとか保たれる、ほぼ正常と呼べる経済状況だった。

ブラック企業の悪評が少なくなった

安倍政権が始まってほどなく2014年頃から、メディアでは「人手不足」の問題が報じられていた。ただ、一部の企業が人手不足に直面している段階では、経済全体や労働市場の需要と供給のバランスが正常化しつつあるだけに過ぎない。

そして、2014年以降も失業率の低下という正常化が続き、先述したとおり2.2%と1992年以来の水準まで労働市場は改善した。特に就職活動に直面する若年世代の就業環境を大きく変えた。約10年前まで世間を賑わせていたブラック企業の悪評が少なくなったが、転職機会が多い若年世代労働者の生活はかなり改善しただろう。

さらに、安倍政権になってから、自殺者数が大きく減ったことにも、労働市場の改善が大きく貢献したと筆者は考えている。安倍政権に対しては中高年世代からの厳しい声が一定程度存在している。だがその一方で、将来がある若者世代の安倍政権への支持率が総じて高いのは、ある意味当然だろう。

経済環境を正常な状況に戻して国民の生活向上を実現するのが、1990年代後半からの日本の政治基盤を盤石にする最重要課題だったはずだ。安倍政権において、長年実現しなかった失業率の大幅な改善がなぜ実現したか。経済再生の方針が掲げられても、従前の多くの政権において、政策手段の実行については経済官僚などにほとんど依存していたのが実情だったとみられる。

具体的に、基本的な経済理論が教える通り、失業率問題を改善するための手段は、金融財政政策(マクロ安定化政策)をセオリー通りに実行することだが、それが不十分だったのである。この問題の本質を、安倍首相らは深く理解していたと判断される。

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