菅政権のデジタル改革が日本株再評価のカギに ゴールドマンのキャシー松井氏に聞く

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――日本にグローバルドミナントな企業が生まれる可能性を感じますか。

もちろん可能性はあると思う。新政権が新設する「デジタル庁」ですべてが解決できるわけではないが、国家横断的な戦略を作り、教育でデジタルリテラシーを強化し、かつ経済全体のスタビリティ(安定性)を高めることが重要だ。

今、若者が完全売り手市場で、優秀な若手がスタートアップ企業など面白い会社へ入るようになっている。この国のリスクテークが加速すれば、将来の日本版GAFAが誕生すると思う。教育への投資とともに、起業家への支援策や規制・法律面の整備など、潜在力を最大化できる環境づくりも大切。親の意識改革を含め、「失敗したほうが成長する」という方向へマインドセットをシフトさせることも重要だ。

「スガノミクス」でDX関連株に注目

――日本株ストラテジストとして、今後の日本市場の見通しは?

「スガノミクス」の下での今後1年先の目標水準については現状、TOPIXで1700ポイント、日経平均株価で2万4500円と設定している。つまり今の水準より数%のアップサイドを見込んでいる。

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前提としてはグローバルなマクロ環境の好転がある。当社では年内にアメリカで新型コロナウイルスのワクチンが最低1つ承認され、来年流通し始めると見ており、それによって経済活動が活発化する。FRB(米連邦準備制度理事会)は2025年まで利上げをせず、超低金利環境が続く。場合によっては財政出動も行われる。そうした中で景気と企業業績が回復し、株価も上昇するという見方だ。当社の世界GDP成長予測は市場コンセンサスを大きく上回っている。

注目セクターとしては、当社では「バーベル戦略」と呼んでいるが、まず右手に成長期待の高い業種、例えば電子部品やITサービス、ロボティクスなど自動化関連を持つ。そして左手には景気敏感性の高い業種、たとえば保険、自動車、機械、鉄鋼株を持つという考え方だ。成長株だけではバリュエーション的にかなり上がっているのでリスクが高い。来年の世界経済回復を前提に、今は海外投資家のエクスポージャー(保有割合)が少ない景気敏感株にもセットで投資すべきと考えている。

――その中でも「スガノミクス」で特に期待できるのは?

やはりIT関連だろう。デジタル戦略をきちんと実施できれば注目度は増す。DX(デジタル・トランスフォーメーション)などというが、まだまだこれからが本番だ。そのためのインフラ整備や古いシステムの更新を積極化すれば、需要拡大の余地は大きい。

もちろん菅氏は地方創生などいろいろな政策を掲げているが、今の日本にとって最も重要なのは、あらゆる分野における「非効率」を見直していくことだろう。単純労働を機械で自動化すればいいという話ではない。そこで余った労働力を活用するには、スキルアップのための再教育プログラムが必要だ。日本にはエンジニアが非常に少ないので、デジタル時代のスキルを持った人材づくりをしなければならない。国内で足りなければ、海外からも積極的にリクルートすべきだ。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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