主要業界別・2010年の見通し~格付け回復への条件《ムーディーズの業界分析》
事業環境は09年前半に底打ちし、10年は緩やかに改善するとムーディーズはみている。一方、環境対応車の人気上昇や新興市場の重要性の高まりなど、中期的に影響を与えるような変化が起きつつある。緩やかな回復というシナリオに基づけば、各社は効率性を向上させ、将来の成長に向けた支出と収益性の回復との適切なバランスを達成する必要がある。09年に各社を格下げした後、ムーディーズは主にこれらの要因に注目している。
在庫調整の終了と、各国のインセンティブプランの導入が、事業環境の回復の支えとなってきた。10年3月期初めに各社が示した業績見通しは、たいへん厳しいものであったが、大幅なコスト削減によって格付け対象各社は着実に業績見通しを上方修正してきた。とはいえ回復は、ほぼムーディーズの予想に沿った動きであり、各社の格付けには織り込み済みである。
10年の世界乗用車販売台数について、ムーディーズは前年比+2%との見通しを09年10月に立てており、若干の回復を見込んでいる。ムーディーズのマクロ経済シナリオは緩やかな回復を想定しているが、世界の主要市場で需要を下支えしてきたインセンティブプランの終了に伴う反動減が懸念される。
ムーディーズは、欧州の販売台数を前年比9%減、米国では前年比15%増と予想している。中国市場でここ4~5年続いた高成長はいったん踊り場を迎えるとみている。しかし、引き続き成長市場であることに変わりはなく、11 年以降、販売台数は再び増加するであろう。この見方に基づき、ムーディーズは昨年10 月に自動車業界の見通しをネガティブから安定的に変更した。
ムーディーズが格付けするトヨタ自動車、日産自動車、ホンダの3社は業界他社に比べ、地理的分散が進んでいる。ただし、米国の比重が高く、欧州は低いため、これら3社の販売台数は、市場全体を上回る回復を示すと見られる。各社は10年3月期に大幅なコスト削減を進めたため、さらなる削減の余地は限られている。それでも、これまでの原価低減への努力の成果や新たな取り組みが収益回復に寄与し、生産の回復傾向もこれを後押しするであろう。また、金融事業は安定化が進むであろう。しかし、為替動向が引き続き業績面でのリスク要因である。