主要業界別・2010年の見通し~格付け回復への条件《ムーディーズの業界分析》
財務面では、09年3月期は信用市場が悪化する中、各社は手元現金を厚くするために借り入れを増加させた。しかし、金融市場の回復と収益の増加に伴い、バランスシートの改善は継続するであろう。
ムーディーズは09年、業界環境と各社業績の急速かつ大幅な悪化を理由として、自動車会社各社の格付けを引き下げた。同年2月、トヨタ自動車をAaaからA1(ネガティブ)に、日産自動車をA3からBaa2(安定的)に、また3月にはホンダをAa3からA1(安定的)に格下げした。今後の格付けを考えるうえで、10年3月期決算と、各社が発表する11年3月期の業績見通しにムーディーズは注目している。また、10年は、環境対応車や新興市場向け専用車の展開が本格化する年であり、中期的にこうした製品の売り上げ構成が高まっていく。同様に、売上高に占める新興市場向け比率、小型車の比率が高まっていく。急速に変化する環境の中で、利益率の改善と維持が課題となろう。
したがってムーディーズは、部品調達方針の変更、生産体制の再編、ラインナップの絞り込みなどがどのように収益に貢献するかに注目していく。各発行体にとって中期的にどの程度の水準の収益性が維持可能であるかを検証することが重要であると考えている。
家電業界
日本の家電業界の見通しは安定的である。ムーディーズは、需要の急激な低下が収まり、在庫水準も正常化したことから、10年3月期の第3四半期に、日本の家電業界の見通しをネガティブから安定的に変更した。
パナソニック(Aa3)、シャープ(A2)、ソニー(A3)をはじめとする格付け対象の日本の家電メーカーは、リーマン・ショック後の厳しい時期を在庫圧縮、コスト削減、設備投資の抑制によって乗り切った。日本の家電メーカーの業績は、09年3月期第4四半期に大幅に悪化したものの、その後10年3月期に入ってからは、収益性、キャッシュフローとも改善に転じている。