主要業界別・2010年の見通し~格付け回復への条件《ムーディーズの業界分析》
現在、家電市場においては、市場の構造変化が急激に進行しており、日本の家電メーカーは、10年以降も引き続きそれに対する対応を迫られるであろう。たとえば、アジアを中心とする新興国需要の拡大に伴い、主要デジタルAV製品に対する価格圧力はますます強まっている。
また、新興国市場においては、韓国メーカーだけでなく、地元の新興企業も台頭してきており、競争はさらに厳しいものとなっている。このような構造変化に効果的に対処できなければ、日本の家電メーカーは中期的に競争力を失う可能性もあるであろう。
ムーディーズは、日本の家電メーカーが戦略面で大きく2つの方向に舵を切っているものと考えている。1つ目の方向性は、新興国市場におけるローエンドモデルの開発・販売や先進国市場における高付加価値製品・サービスの導入(3Dテレビ、ネットワークサービスなど)を通じ、既存のデジタル家電事業の競争力を強化していこうというものである(主にソニー)。もう1つの方向性は、高い競争力を持つ太陽電池、車載用2次電池などデジタル家電以外の事業を拡大していこうというものである(主にパナソニック、三洋電機、シャープ)。
格付け対象の家電メーカーは程度の違いはあるものの、これら2つの戦略を並行して実施している。ムーディーズは、これらの戦略が日本の家電メーカーの中期的な競争力の維持に資するものと考えている。日本の家電メーカーは、確立したブランドや高い技術力、豊富な資金力を有しており、それらを生かしながら、それぞれの製品市場で今後も主要プレーヤーとしての地位を維持していくことは十分可能であろう。
しかしながら、急激に変化する世界市場で今後より重要になってくるのは、こうした戦略を、いかにスピード感をもって実施していくかであろう。特に効率的な開発・調達・生産・販売体制を新興国も含むグローバルレベルで早期に確立していくことが不可欠となろう。ムーディーズはこの点が中期的な信用力に大きな影響を与えるものと考えており、今後も引き続き注目していく。
旅客航空業界
世界の航空業界の見通しはネガティブである。この見通しは、世界的な景気回復が本格化するまで、イールドに継続的に圧力が加わるというムーディーズの見方を反映している。