主要業界別・2010年の見通し~格付け回復への条件《ムーディーズの業界分析》

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コーポレートファイナンス・グループ
VP-シニア・アナリスト 廣瀬和貞
VP-シニア・アナリスト 小坂則子
VP-シニア・アナリスト 岡本賢治
VP-シニア・アナリスト 臼井 規
AVP-アナリスト 澤村美奈
アナリスト 桜林 潤
アナリスト 高橋良夫

概要

ポジティブ方向への格付けアクションの数は、2010年を通して緩やかに増加するであろう。ネガティブから安定的への格付け見通しの変更が、その大半を占めると見られる。また、格付け見通しが安定化する時期は、事業再編の効果が顕在化し始めるとみられる10年第2四半期(4~6月)以降となるであろう。

08年9月のリーマンショックを契機とする世界的な景気後退を受けて、ムーディーズが格付けを付与する日本の発行体の業況は著しく悪化し、09年(暦年)に多数のネガティブ方向での格付けアクションがなされた。しかしこれまでのところ、日本の事業会社は、保守的に設定された10 年3 月期の収益および財務目標を、若干上回る業績を計上している。

これらの業績は主として、(1)コスト削減とそれによる営業利益水準の安定化、および(2)設備投資の抑制とそれによる債務の抑制または削減によって確保された。しかし、このような形で確保された営業利益は、今後の収益性の更なる回復には直接つながらない可能性がある。

09年には、日本の格付け対象発行体の多くが、非中核事業の売却や競争優位にある事業への集中などを含む、多くのリストラ施策を実施した。これには、急成長する新興国に大きく依存する世界市場の新たな構造に対応するための組織全体の再編も含まれる。中国、インド、その他の発展途上国に製造・販売ネットワークを拡大する日本企業が増えている。

また、多数の企業がサプライチェーン・マネジメントを改善し、設備投資を抑制し、減配を行った。さらに、何社かは増資に成功することで、事業リストラ関連による損失の一部を相殺することができた。

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