実証実験は、サニーCCで9月下旬から10月上旬の平日に3回、2泊3日の予定で行われる。ゴルフ場クラブハウス内をはじめとする各施設、宿泊施設(ロッヂ、コテージ)をリモートオフィスとして貸与する。パソコンを持参すれば、Wi-Fi環境は完備されている。
参加費用はクラブハウス内のロッヂ宿泊でシングル2万2000円から(税込み、以下同)、別棟のコテージ宿泊の場合は4人利用で1万7600円から、などとなっている。
実験期間中の特典として、ゴルフ場内の練習施設「サニーCCゴルフレンジ」を無料で利用できる(ボール代は別)。また、18ホールをプレーする場合は優待料金6300円、薄暮プレー3490円で利用できる。「仕事場でゴルフもできる環境」ということになる。
ゴルフ場では通常「レストラン以外に食事ができない」「コンビニが遠い」などがネックになるが、今回はレストランとは別メニューながら3食がついている。「ゴルフを趣味としている」人を優先的なターゲットと考え、「こんなサービスがあったらいいだろう」という視点で今回の特典を設けたという。
実証実験の終了後、「労働生産性」「業務上の問題や改善点」「自宅や会社での仕事との比較における差異(主にストレス面)」などに対するアンケート調査への協力が必須となる。また、参加者には「参加前の検温」や「3密を避けた行動」など、感染防止のための一定の制限を設けている。
実証実験を進める両者の思惑
矢野経済研究所スポーツ事業部の三石茂樹氏によると、今回の実証実験には4つの背景があるという。
1つが、ゴルフ業界の事情だ。コロナ禍によってゴルフ場産業も負の影響を受けている。とくにインバウンド需要がゼロになったことは大きい。三石氏自身、かねて在宅勤務とゴルフ場施設の親和性の高さを感じており、「コロナ禍における新たなビジネスモデル」としての可能性を感じていたそうだ。
2つ目が、参画する企業側の事情。ウィズコロナの状況が長引けば、「新たな働き方」を模索する動きは加速するとみられる。同時に、「健康経営」という言葉に代表されるように、従業員の心身の健康を実現することで従業員満足度を向上させ、業績改善につなげようという動きが盛んになっている。
3つ目が、参加者の視点だ。ゴルフ好きにとっては、ゴルフ場が仕事の傍らにあるのは夢のような環境。一方、ゴルフ未経験者にとっては、コロナ禍の中で低下しがちな体力の向上につながるうえ、ゴルフの魅力に気づくきっかけになる可能性もある。
4つ目が、地方創生の観点だ。都市部と地方の交流人口が増加すれば、地域の活性化につながる。政府を筆頭に、業績もワーケーション推進へ舵を切っている。この流れが加速すれば、将来的には移住人口の増加も期待できる。
そのうえで、三石氏はワーケーションの場としてゴルフ場を使うメリットを次のように解説する。
「ゴルフ場は基本的に市街地から離れた場所にあるため、夜の街に繰り出してコロナを広げるリスクや感染リスクが低いという優位性があります。また、夜の街的な“誘惑”も少ないため、従業員は業務に集中して、心身ともに健康かつ健全なワーケーションの実施が可能となり、企業にとっても安心です」
ただし、メリットばかりではない。ゴルフ場は総じてネットワーク環境が脆弱だ。ゴルフ場までの足の確保、環境がよすぎて逆に仕事に身が入らない、企業側の就業規則改定の必要性、近所にコンビニがない、食事提供の仕組み化などの課題もある。
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