菅新首相の肝いり政策に乗るゴルフ業界の事情 「ゴルフ場でワーケーション」は広がるか

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今回の実証実験は、ゴルフ関連企業を中心に呼びかけているという。ゴルフ場との親和性の高さや、今回の実験に一定の理解を示してくれる(参加者を出してくれる)だろうという仮説に基づくものだ。

ただし、それでは「単なる内輪ネタ」で終わってしまう。次回以降は、柔軟な働き方を実践している企業や、トーナメントに協賛しゴルフに対して好意的な企業にも声掛けをしたい意向だ。今回の実証実験でエビデンスが取れれば、ほかのゴルフ場への水平展開も視野に入る。

それでは、今回の実証実験を引き受けたサニーCCには、どのような思惑があるのか。広報担当の高野進一郎氏は「練習施設と宿泊施設を完備しているため、ワーケーションの施設として進めたいと思っていたところでした」と明かす。

コロナ禍によって長野県内の客は例年に比べて30%増えたが、県外客は半減。緊急事態宣言が発出されていたゴールデンウイークには、予定していた大学体育の課外授業や都心からのレッスン合宿が全滅した。

そんな中、業務提携しているるサザンクロスカントリークラブ(静岡県伊東市)が、併設するリゾートホテルを利用した「素泊まりテレワークプラン」という滞在型の商品を売り出したところ、約30件の需要があり、1週間の長期滞在もあった。

サニーCCにはロッヂ19室、コテージ8棟の宿泊施設がある。「コロナ禍によって、会社で仕事をするという概念も崩れてきました。来春からワーケーションパックの案内も予定しているため、実験をお受けすることで、料金が妥当なのか、Wi-Fi環境は大丈夫か、長期滞在の場合の食事や洗濯はどうするかなど、受け入れに向けての課題をクリアしたい」(高野氏)。

費用の自己負担比率が焦点

宿泊施設を持っているゴルフ場は多い。宿泊料金が収入の柱になっているところもある。ワーケーションという「新しい生活様式」の中で活用できるようになれば、ゴルフ場の可能性も広がる。

ワーケーションは休暇が「主」、仕事が「従」の関係で、交通費や宿泊費が自己負担というのが基本だが、今回の実証実験では参加に当たって出張扱いにするなど、自己負担の軽減を参加企業に要望している。

この先、ワーケーションが根付いていくには、企業と社員の負担の割合や休暇の扱い方などの取り決め・線引きも必要になる。菅新政権が本腰を入れて推進するのであれば、当初は「Go To トラベル」と区別して「Go To ワーケーション」のような別建ての補助・支援を行う予算措置があるといいかもしれない。

「休暇なのに仕事をさせられる」「仕事なのに遊びに行く」という否定的な意見も当然あるだろう。ただ、やってみて、社員のストレスが減り、仕事の効率も上がるという効果が得られたら、企業の福利厚生の一環として導入されていくかもしれない。

NTTデータ経営研究所がJTBや日本航空と連携して行ったワーケーション効果検証実験では、「経験することで、仕事とプライベートの切り分けが促進される」「情動的な組織コミットメント(所属意識)を向上させる」「実施中に仕事のパフォーマンスが参加前と比べて20%程度上がるだけでなく、終了後も5日間は効果が持続する」などの結果が出たという。

今回のゴルフに特化した実証実験でポジティブな結果が得られれば、ゴルフ界、とくに宿泊施設を持っているゴルフ場が活路を見いだす明るい材料になるはずだ。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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