コロナ「脳細胞にまで侵入する」という新事実

遺伝的背景などから脳感染リスクが高い人も

岩崎氏のチームによる新研究では、脳への感染の証拠が3つの方法で積み上げられている。新型コロナ感染症で死亡した人の脳組織の分析、マウスモデルによる実験、そしてオルガノイドでの実験だ。オルガノイドとは、シャーレ内で脳の3次元構造を再現した脳細胞の塊である。

ジカウイルスなど、脳細胞に感染することがわかっている病原体はほかにも存在する。こうしたウイルスに感染すると大量の免疫細胞が損傷部位に集まり、感染した細胞を破壊することで脳を浄化しようとする。

新型コロナの動きは、これよりもはるかにつかみどころがない。脳細胞の機構を利用して自己複製するが、細胞を破壊することはしない。かわりに、近接する細胞から酸素を奪い、衰弱死させるのだ。

ニューロン間をつなぐシナプスの数が急減

研究では、これに対し免疫反応が起こっていることを示す証拠を見つけることはできなかった。「静かな感染だ」と岩崎氏。「新型コロナは回避メカニズムをたくさん持っている」。

これらの知見は、新型コロナに感染したオルガノイドのほかの観察結果とも一致する、とカリフォルニア大学サンディエゴ校の神経学者アリソン・ムオトリ教授は述べる。同教授はジカウイルスの研究も行っている。

新型コロナは、ニューロン間をつなぐシナプスの数を急激に減少させるようだ。

「感染からわずか数日で、シナプスの数が急激に減少しているのを観察できる」とムオトリ氏は言う。「これが元どおりになるものなのかどうかは、まだわからない」。

新型コロナは、細胞表面にあるACE2と呼ばれるタンパク質を利用して細胞に感染する。このタンパク質は全身に発現するが、とりわけ肺に多い。新型コロナでとくに肺が標的となるのは、このためだ。

先行研究では、タンパク質量の指標を根拠に、脳にはほとんどACE2がなく、感染する危険性は少ないと示唆されていた。しかし岩崎氏らがより詳細な研究を行ったところ、新型コロナは実際にこの経路で脳細胞に侵入できることがわかった。

岩崎氏によれば「ACE2がニューロンで発現していること、そして細胞への侵入に必要であることは、かなり明白だ」。

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