コロナ「脳細胞にまで侵入する」という新事実

遺伝的背景などから脳感染リスクが高い人も

そこで岩崎氏のチームは、2群のマウスで対照実験を行った。片方はACE2受容体が脳だけに発現しているマウス、もう片方はACE2受容体が肺だけに発現しているマウスだ。これらのマウスを新型コロナウイルスにさらすと、脳に感染したマウスは急激に体重が減少して6日以内に死んだが、肺に感染したマウスは違った。

マウスの研究結果である点は割り引かねばならない。が、それでも、これは脳感染が呼吸器感染以上に致命的となる可能性のあることを示している、と岩崎氏は話す。

肺の炎症が脳卒中につながるケースも

新型コロナは、嗅覚を司る嗅球、眼、さらには血流を介して脳に侵入する可能性がある。実際にどの経路で侵入しているかは明らかでなく、また感染者に見られる症状を説明できるほど頻繁に侵入が起こっているのかどうかもわかっていない。

「科学的データが臨床的証拠に先行している事例だと思う」とムオトリ氏。

脳感染がどれほどの頻度で起きるのか、そして軽症者や、多くの神経症状を呈することの多い長期患者(「長距離輸送車」と呼ばれる)でも起きるものなのかどうかを推定するには、多くの検視標本を分析する必要がある。

新型コロナ患者の40~60%は神経症状や精神症状を経験すると、ジョンズ・ホプキンス大学の神経科医ロバート・スティーブンズ氏は言う。しかしこうした症状のすべてが、新型コロナウイルスの脳細胞への侵入に由来するとは限らず、全身の広汎な炎症の結果として引き起こされている可能性もある。

例えば、肺の炎症によって血液の粘着性を高める分子が遊離され、血管を詰まらせて脳卒中につながることもある。「そうした症状は、脳細胞自体が感染していなくても起きる」とザンディ氏は指摘する。

しかし一部の感染者では、感染した脳細胞のために血中酸素濃度が低下することが脳卒中の引き金になっている可能性があるとザンディ氏は付け加える。「患者のタイプが異なれば、病態も異なる可能性がある。(肺の炎症と脳感染の)両方が組み合わさることも十分に考えられる」。

脳の中に霧が立ちこめたように頭がぼーっとなるブレインフォグ、せん妄といった一部の認知症状は、鎮静剤を用いたり人工呼吸器を装着したりしている患者では把握しづらくなる。医師は可能であれば1日に1回鎮静剤の投与量を計画的に減らして患者の状態を評価すべきだと、スティーブンズ氏は話す。

(執筆:Apoorva Mandavilli記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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