セールスフォースが驚くほど信頼を重視する訳 「自分たちさえよければよい」という発想はない

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創設者マーク・ベニオフの経営哲学とは?(写真:ロイター/Brendan McDermid)

トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考』(マーク・ベニオフ、モニカ・ラングレー 著、渡部典子 訳、東洋経済新報社)の著者であるマーク・ベニオフは、セールスフォース・ドットコムの創設者であり、現在は会長兼CEOを務める人物。

ちなみにセールスフォースは、CRM(顧客関係管理)ソフトウェアを提供するために、いち早くクラウド・コンピューティングを活用してみせた企業である。

利益を上げるか、変化を起こすか

いわば彼は、クラウド・コンピューティングの先駆者だということになるが、創業した1999年の状況を「利益を上げるか、変化を起こすプラットフォームになるか、企業はどちらか一方を選択しなければならないと考えられていた」と振り返っている。

『トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

たしかにそのとおりで、例えばいい例がGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)だ。単純化すればその精神性は「自分たちさえ成功すればいい」というもので、結果的にそれは大きな経済格差を生むことにもなった。

2018年に『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(スコット・ギャロウェイ 著、東洋経済新報社)が大きな衝撃を投げかけたのも、多くの人の心の中にぼんやりとあった“不平等感”の実態を明らかにしたからではないだろうか。

そういう意味で同書には価値があったわけだが、とはいえITビジネスの“不平等感”が是正されることはなく、残念ながらそれは常識化しているとさえ言える。誰もが「間違っているんじゃない?」と口に出したいのに、それができないような空気が醸成されてしまっているというべきかもしれない。

だがベニオフは、そうした流れに逆行しながらも成功を収めた。端的に言えば「自分さえよければいい」という発想は彼の中になく、それどころか“人や社会の役に立つ”という、本来あるべきことを重視し続けてきたのだ。

1999年にセールスフォースの法人登記書類に署名したとき、私たちは企業文化の中に社会の役に立つという信念を確実に根づかせたいと考えていた。もちろん、従来の物差しで企業として成功するに越したことはないが、同時に、世界に好ましい影響を与えようとも決意していた。(「はじめに」より)
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