コロナ感染より「隔離・制裁」を怖がる人が多い 日本に蔓延する「奇妙な恐怖心」のほうが心配

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大変興味深いことに、「ロックダウンは科学的エビデンスがない」として行わなかった国、スウェーデンでは、集団免疫がほぼ獲得されてコロナ感染が収束し世界で注目を集めています。現地在住の医師・宮川絢子先生に伺ったところ、スウェーデンでは「無症状の人は一貫してPCR検査をしていない」そうです。「濃厚接触者においても、症状がなければ基本的に検査はしていない」とのことでした。例外は介護施設勤務者であるなど特別な場合です。

つまり症状のある人だけがPCR検査を受け、本当に治療の必要な人のみが入院し、陽性でも軽症ならば自宅療養になる。濃厚接触者になっても無症状の人は、ソーシャルディスタンスをとることを推奨されるのみで、基本的には仕事や学校に普通に行けるとのことでした。今後、家庭内での濃厚接触者に対しては扱いが変わる可能性があるそうですが、いずれにせよ日本と比べて圧倒的に隔離対象になる割合も少なく、医療機関にも無駄な負担がかかりません。

スウェーデンでは感染者への偏見がない

宮川先生によるとスウェーデンでは、コロナ感染者対して日本のような偏見や差別が一切存在せずに、もし感染したとしても「コロナにかかっちゃったよ」と軽い雰囲気だといいます。ちなみにスウェーデンは当初は介護施設での院内感染が原因で死者数が増えましたが、職員の検査と健康管理を徹底したのちに死者数は激減し、8月に入ってからは1日数名~0人となっています。

日本はスウェーデンに比べて死者の総数が約5分の1であるにもかかわらず、国民の不安や恐怖感は比べ物にならないほど大きく、クラスターが発生すると大学や会社が謝罪して感染者は非常に肩身の思いをさせられます。地方では露骨な迫害が発生しています。これはコロナウィルスそのものによる恐怖だけではなく、「隔離・制裁恐怖」によるところが非常に大きいように思われます。

今後は世界の動向とともに、日本でも新型コロナ対策がどんどん見直されていくものと思われますが、国民に蔓延している「隔離・制裁恐怖」が解消される事を願ってやみません。

ちなみに、コロナ感染後の後遺症についても、一部のメディアで過激に報道されていますが、筆者の関わったコロナ感染者約20名は、その家族(子供も含む)ともに後遺症はまったくなく全員元気に復帰されています。このことについては次回詳しくご紹介したいと思います。

謝辞:本コラム執筆にあたり、宮川絢子先生(スウェーデン・カロリンスカ大学病院泌尿器外科医師)、松岡伸英先生(八尾徳洲会病院肝臓外科医師)に助言・協力を頂きました。ここに厚く御礼申し上げます。

奥田 弘美 精神科医・産業医

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おくだ・ひろみ / Hiromi Okuda

精神科医(精神保健指定医)・産業医(労働衛生コンサルタント)。1992年山口大学医学部卒。精神科医および都内約20の企業の産業医として、働く人を心と身体の両面からサポートしている。著書は『1分間どこでもマインドフルネス』(日本能率協会マネジメントセンター、2016年)、『心に折り合いをつけてうまいことやる習慣』(共著、すばる舎、2018年)など多数。「日本マインドフルネス普及協会」を立ち上げ、日本人に合ったマインドフルネス瞑想の普及も行っている。

 

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