女子高生CFOがユーグレナに促した「ある決断」 任期中の成果は自社ペットボトル商品の全廃

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それでも小澤さんは「ユーグレナの削減するプラスチックは大した量ではないかもしれないが、消費者にとっての選択肢が増えて消費者の意識が変わることが大事」と考える。経営戦略部の石井友理氏も、「工場で排出されるCO2(二酸化炭素)をゼロにするほうが環境負荷の軽減効果は大きいが、それは企業として淡々とやっていけばいいこと」と、小澤さんの意見に賛同する。

ユーグレナはバイオ由来のプラスチック開発にも取り組んでいる。企業内でできることを進めつつ、自社の商品やサービスを通じて消費者が環境問題に興味を持つことを期待しているという。

CFOの小澤杏子さん(中央)と、フューチャーサミットメンバー(写真:ユーグレナ)

小澤さんをはじめとする学生メンバーは、環境問題に対する興味関心が強く、達成したい目標も大きかった。「日本中のプラスチックをなくしたい」と話すメンバーもいたというが、結果として短期間で達成可能な目標の作成を重視した。

多くの企業が2030年や2050年までといった長期的目標を立てる中、あえて2021年中という短期的目標を立てることで社内の緊張感を醸成するようにもした。「実際に会社の活動に参加したことで、理想を掲げるだけでなく達成するための現実的な判断の仕方や、優先順位のつけ方を学ぶことができた」(小澤さん)。

投資家や学生の認知度が高まった

現役高校生の経営関与はユーグレナにどんな変化をもたらしたのか。同社では以前からペットボトル商品の廃止について議論していたが、「ペットボトル商品とカートカン商品では小売店で置く棚が異なる。ペットボトル商品をなくせば一部とはいえ売り上げが減るとの懸念が社内にあり廃止に踏み切れなかった」と、石井氏は明かす。

ユーグレナの取締役の多くは40歳前後で高齢とまではいえないが、若い小澤さんの思い切りのよいメッセージは響いたようだ。

対外的な変化も大きかった。ほかの企業からCFOの活動実態について問い合わせが来るほどで、IR(投資家向け広報活動)担当者が機関投資家と話す中でも話題に上がることがあるという。学生など若者の間でユーグレナの認知度が高まったことも大きい。「インターンとして来たい」という連絡が学生から直接寄せられるようになった。海外の学生からも問い合わせが来る。

小澤さんも同世代との交流の中で認知度の向上を実感している。環境問題を自分事として捉える若い世代の間で、「ユーグレナは環境のことを本当に考えて動いている会社なんだなという認識が広がっている」と話す。

CFO制度は多くの若者を惹きつける取り組みとなり、10月から第2期を迎えることになった。応募受付はすでに終え現在選考中だ。小澤さんが打ち立てた「消費者に依存しない環境配慮の仕組みを作る」方針をどう継承していくのか。一過性の話題で終わらせないための方策が期待される。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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