崎陽軒の台湾「シウマイ弁当」にマグロがない訳 初の海外進出に秘められた試行錯誤の舞台裏
帰国したときに外食でいただく日本食は、とにかくしょっぱい。味噌汁、梅干し、各種ソースやタレ、果てはスープやカレーといった汁物でさえ、しょっぱく感じてしまう。家庭料理のレシピも、調理の最初と最後に塩で決めることが多い。総じて、日本人の塩加減はかなり強めなのだ。
検討の結果、台湾版のシウマイ弁当では、マグロの漬け焼きは採用されないことになった。
「お弁当で大事なのは、ご飯とおかずのバランスです。食べ終わりに、おかず、もしくはご飯のどちらかが残ってしまうのは、塩分バランスがうまくいっていない。ですから、どちらかが残らないように、全体を調整しました」
さらに、シウマイ弁当の日本版のシウマイは5個のところ、台湾版は3個となり、ご飯の量も台湾版は日本版より少なめにすることが決まった。
崎陽軒といえば、マスコット「ひょうちゃん」も欠かせない存在だ。瀬戸物として瀬戸で生産されている、この醤油入れ。今回は台湾オリジナルデザインのひょうちゃんが製作された。
20個入りシウマイにだけ付く、このひょうちゃん。当初、かなりの数を生産し、台湾へと送ったのだが、8月7日のオープン時から評判を呼び、月末には台湾版が品切れしてしまった。一時的に日本版を手配し、販売する事態となった。なお、今は元どおり台湾版が販売されている。
台湾版は、台北101、台湾茶器、台湾黒熊、タピオカミルクティーなど、台湾のシンボルとしてよく知られるスポットや雑貨など全7種類。マニアには必須の収集アイテムとして、また人気が出そうだ。
老舗による新たなローカライズ
台湾店舗のスタートからおよそ1カ月が過ぎた。開店当初は日本人客が7割を占めていたが、徐々に台湾人客が増え、今では台湾人客のほうが多くなっている。行列を解消すべく、スタッフも増員された。
取材中、シウマイ弁当4個を注文していた客が受け取りにきた。「いやあ、本当においしいよね」と満面の笑みで弁当の入った袋を受け取る姿を見て、なんだかこちらまでうれしくなった。
「駅弁業界は今、厳しい状態です。全盛期では駅弁を作る会社が400社ほどあったのですが、今は100社以下にまで減りました。台湾でシウマイ弁当を食べた人が、いつかまた横浜に来て食べてみよう、と思っていただけたら」と西村氏は語る。
日本でローカライズされた一品が、時を経て、また新たなローカライズを目指す——。この挑戦がどうなるのか、行方を見守りたい。
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