崎陽軒の台湾「シウマイ弁当」にマグロがない訳 初の海外進出に秘められた試行錯誤の舞台裏
「座れるところを探して、食べるつもりです」
崎陽軒台北駅店の店頭で4個入り焼焼売(やきシウマイ)を買った客は、少しはにかむような笑顔でこう答えた。
ここは台湾の交通の起点となる場所、台北駅。バス、MRT(メトロ)、在来線に新幹線が通り、1日当たりの利用者数は12万人に上る巨大な交通ネットワークのハブである。
1階には大きなホールを中心に、土産物店、旅行社、飲食店が並ぶ。ホールでは、座り込んで仲間とおしゃべりする人、スマートフォンをいじる人、寝ている人など、さまざまな人の姿を見かける。
横浜の名物として知られる「崎陽軒」が海外1号店をオープンさせたのは、この台北駅1階、北門出口のすぐそばだ。左側にはドリンクスタンド、右側にはデザート店があり、お弁当を挟むにはうってつけの立地といっていい。
日本は汽車弁、台湾は駅弁
「日本で『駅弁』と言っていますけれど、台湾のほうが本当の意味で『駅弁』だなと思いました。台湾の人たちは、お弁当を買ったら電車に乗る前に駅で食べてしまいます。日本では買ってすぐに食べるわけではなく、汽車の中で食べるわけですから、むしろ『汽車弁』なんだな、と思いました」
こう話すのは、創業112年となる老舗初の海外進出プロジェクトを任された西村浩明氏だ。
ややこしいので、本稿では駅弁で通すが、この駅弁、台湾と日本では弁当の中身から食べ方までさまざまに異なる。当然ながら、日本の商品は日本の社会や文化、習慣に即して開発されている。
いったん海外へ出ると、その地の文化習慣を理解し、臨機応変に変化できるかどうかが問われる。これは人であろうと商品であろうと同じだ。
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